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ピエロ。
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97 :
仁王雅治
2008/10/14 15:46
空の曇った層からとうとう雨が降り出した昼下がり。
(あーあ、傘持ってねえのに。)
すっかり香りを無くしたキンモクセイが地べたに張り付いているアスファルトを俺は無言で歩く。
(あーあ、踏んじゃった。)
意図しない浅はかな言葉はそれでもごく自然に零れるように心の中で呟かれて初めて気付いたみたいに俺は改めて景色を確認する。
(あーあ、もうそんな時期か。)
普段から通るこの道に並んだキンモクセイの木は今やひとつの小花だって残しちゃいない。
(あーあ、綺麗だったのに。)
今や単なる並木道となったここを、あんなにいい匂いだと顔を綻ばせて部活に向かっていた朝はそう遠い日じゃあないのに、湿って踏み締めても音も鳴らさない橙色の絨毯はただ静かに俺の体重を享受している。
(あーあ、ぐちゃぐちゃだ。)
季節が巡るってこういうことか。
(次は紅葉だねぇ。)
そしてキンモクセイと同じ末路を色とりどりの葉が道路を覆って今日とどこか同じ感覚を思い出す頃に、漸く俺の待ち詫びた季節が来るのだ。
(あーあ、巡る巡る。)
季節に期待する反面あまりに正確に過ぎる時間は景色によって残酷に時の流れを俺にまざまざと見せ付ける事を知った。
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