スレ一覧
┗
794.寿司好きのシェパードとかき氷の森(保存)
┗192
192 :
eたoいhちeょoうh(実/況)
2016/03/03(木) 17:12
Pあ-しPのはなし。
Pあ-しPは俺の新隊員教育隊時代の頃の同期である。
今は他の駐屯地で野戦特科でうまくやっているらしいと聞いていた。……聞いていた、んだが。
「えっおちゃーん?」
ア虻ブさんに呼び出され、俺は自分の駐屯地の外に出ていた。ア虻ブさんの部隊の物だというパジェロを運転しながら外の景色を眺める。
「……それで、俺を引っ張ってどうするんですか?」
「会わせたい人が居てねぇ」
ウフ、と微笑んだア虻ブさんはそれ以上の詳しいことは言わずに誤魔化された。しかしながら、目的地が近くなれば考えるのはそこの駐屯地にいる同僚のこと。Pあ-しP元気にしてっかなぁ、とふと思った。
そうして会いに行った先で対面したのはPあ-しPだった。
「……eたoいhちeょoうh?」
Pあ-しPは俺を見て目を丸くして俺を見つめた。
「……よう」
俺はへにょりと笑って挨拶した。
そこに居たPあ-しPは椅子に座っていた。横には松葉杖が立て掛けてある。
「わー、久しぶり!元気だった?」
Pあ-しPは昔と変わらない笑顔で言った。けれど、筋肉がついて綺麗に引き締まっていた自慢の足が細く若干衰えているのを見て俺は少し悲しくなった。顔や表情なんかは昔と変わっていないように見えたが、些細な部分を見れば違和感はいくつもあったのである。
「ああ、ぼちぼち元気だった」
「レ/トさんと同じ駐屯地にいるんだって?キ/ヨくんから聞いたよー!」
「仲良くなった」
「ほんと?今度皆で遊びに行こうよ!」
そこでPあ-しPは少しだけ苦笑いして「足が治ったらね」と付け加えた。俺は黙って頷いた。
「散歩に行かない?ここの駐屯地、案内するよ」
「頼む」
慣れた様子で松葉杖を使って歩くPあ-しPを見てその生活の長さが窺えた。結局散歩は他愛の無い雑談とか、そういう話で終わった。
>>198につづく。
[
削除][
編集]
[
設定]
198 :
eたoいhちeょoうh(実/況)
2016/03/08(火) 22:27
>>192続き。
「彼とのお散歩はどうだった?」
駐屯地内にあるカフェの一角で、ア虻ブさんは優雅にコーヒーを飲んでいた。
「ええ……」
端から見ればPあ-しPはただ松葉杖をついている人間ではあったが、戦場を駆ける彼を知っている俺からすれば健康でない状態の彼があまりにも頼りなくて、恐ろしかった。
「彼、どうしてああなったか知ってる?」
俺は首を横に振った。Pあ-しPとの散歩の間は近況や雑談ばかりで足について触れることは全くなかったからだ。
「きっかけは、よくある戦場での怪我なんだよね」
その日戦場へ出向いていたPあ-しPは自分が指揮下に入っている分隊で、ミサイルの準備をしていた。余談だが、野戦特科は対陸ミサイルを使う部隊であり、キ輩ヨの居る高射特科は対空ミサイルを使う部隊である。そのミサイルの発射準備中、敵ミサイルにより奇襲を受け、発射台が破壊された。その離脱行動中、無理な行動をして足を痛めたそうだ。
「そこで大人しく療養してくれればよかったのにぃ……ねぇ?」
そう、怪我自体はそこまで酷いものではなかった。そのままちゃんと治療すれば後遺症は残らなかったのだが、Pあ-しPの部隊は慢性的な人手不足らしく、彼も無理して出撃し続けていたそうだ。それが祟って、悪化してしまったらしい。自業自得といえばそれまでだが、自分一人が出撃することで死人が減ると考えてしまえば、無理をするのも仕方がなかった。
「この私がメスを取ったからには治せないものなんてありませんけどねー」
ア虻ブさんがニヤリと笑って言った。詳しくPあ-しPの体の状態や手術方法なんかを説明してくれたが、面倒なので割愛。
「あと、公務災害も申請するつもり」
「ああ……」
ようは死んだときの保険金みたいなものだ。戦争中に死んだり後遺症の残る怪我をしたらお金が出る制度。金で全ては解決出来ないが、金で少しでも補填できれば良いとは思う。
「Pあ-しPは今後どうなるんでしょうか……」
「どうだろうねー」
しみじみと返された。
「彼の治り具合にもよるけど、最前線はもう止めた方が良いとは思う」
次第によっては部隊の変更も勧めるかな、退職させたくはないから。ア虻ブさんは遠い目をして言った。まだ若いとはいえ、後遺症の残る人間を採用してくれる所は限られてくる。解雇されたら再就職先にもきっと困ってしまうだろう。
「元気に、なって欲しいですね……」
「なるよ」
俺が小さく呟くと、思いの外強い言葉が返ってきた。
「絶対に、元気にさせてみせる。それが医者の使命だ」
「……Pあ-しPを、お願いします」
ア虻ブさんは深く頷いた。
192 :
eたoいhちeょoうh(実/況)
2016/03/03(木) 17:12
Pあ-しPのはなし。
Pあ-しPは俺の新隊員教育隊時代の頃の同期である。
今は他の駐屯地で野戦特科でうまくやっているらしいと聞いていた。……聞いていた、んだが。
「えっおちゃーん?」
ア虻ブさんに呼び出され、俺は自分の駐屯地の外に出ていた。ア虻ブさんの部隊の物だというパジェロを運転しながら外の景色を眺める。
「……それで、俺を引っ張ってどうするんですか?」
「会わせたい人が居てねぇ」
ウフ、と微笑んだア虻ブさんはそれ以上の詳しいことは言わずに誤魔化された。しかしながら、目的地が近くなれば考えるのはそこの駐屯地にいる同僚のこと。Pあ-しP元気にしてっかなぁ、とふと思った。
そうして会いに行った先で対面したのはPあ-しPだった。
「……eたoいhちeょoうh?」
Pあ-しPは俺を見て目を丸くして俺を見つめた。
「……よう」
俺はへにょりと笑って挨拶した。
そこに居たPあ-しPは椅子に座っていた。横には松葉杖が立て掛けてある。
「わー、久しぶり!元気だった?」
Pあ-しPは昔と変わらない笑顔で言った。けれど、筋肉がついて綺麗に引き締まっていた自慢の足が細く若干衰えているのを見て俺は少し悲しくなった。顔や表情なんかは昔と変わっていないように見えたが、些細な部分を見れば違和感はいくつもあったのである。
「ああ、ぼちぼち元気だった」
「レ/トさんと同じ駐屯地にいるんだって?キ/ヨくんから聞いたよー!」
「仲良くなった」
「ほんと?今度皆で遊びに行こうよ!」
そこでPあ-しPは少しだけ苦笑いして「足が治ったらね」と付け加えた。俺は黙って頷いた。
「散歩に行かない?ここの駐屯地、案内するよ」
「頼む」
慣れた様子で松葉杖を使って歩くPあ-しPを見てその生活の長さが窺えた。結局散歩は他愛の無い雑談とか、そういう話で終わった。
>>198につづく。