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794.寿司好きのシェパードとかき氷の森(保存)
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255 :eたoいhちeょoうh(実/況)
2016/06/04(土) 21:26

俺が新隊員の頃の話だ。
「ね、守破離って知ってる~?」
「しゅはり、ですか?」
夜、俺が寮の外で靴磨きに勤しんでいると俺の教育隊の隊長である蘭伝た説んが現れた。俺が慌てて立ち上がって挨拶すると「いいよ~気にしないで靴磨いて」と緩い口調で話した。俺の靴磨きをしばらく眺めてから、彼はそう言った。
「えーと、何だっけなぁ。武道の言い伝えとかだったと思うんだけど」
もごもごと何やら言っているけれど、結局思い出せなかったようで蘭伝た説んは「それはともかく」と切り替えた。
「守破離は字のごとく『守って破って離れる』って意味なわけ」
靴で地面に文字を書いてくれた蘭伝た説ん。
「上の人から教えて貰った方法を忠実に『守る』んだよ。それが完璧に出来るようになったらそれを自分流にアレンジして型を『破る』、バリバリーっと。そうすると自分の型を極めていくからさー、既存の型から『離れる』んだよねぇ」
「守って、破って、離れる……」
「そ~だよ~。それが守破離ってやつぅ」
にへ、と蘭伝た説んは口を緩くして眠そうに笑った。
「君の靴磨きに例えるとぉ、まず先輩から方法教えて貰ったじゃん。完璧に出来たら、磨く材質を布じゃなくてコットンとかにしたり靴墨の種類を変えたりアレンジするよね~。そんで、自分にとって一番やりやすい靴磨きの方法に最終的には行き着くわけ」
半長靴もモノとか環境によって一番良い方法が違うしねーえ、なんてぼそりと呟く。俺はこくりと頷いた。
「だから、全てにおいて守破離を心得ておいて欲しいなあ」
そう言うと、蘭伝た説んは去っていってしまった。言いたいことを言うだけ言って去っていく。いつもそういうフリーダムなスタイルだった。破天荒なくせに人を惹き付ける、不思議な隊長であった。
「守破離……」
彼の教えは教育が終わって、今になっても心に根付いている。教育隊のころも、部隊に配属されても、俺は先輩の教えを忠実に守ってきた。そうして少し偉くなったら自分のやりやすいように戦い方や配置を変え、俺は一つの部隊を持った。俺はもう『離れる』ところにまで来てしまったけれど、彼の教えはおそらく一生忘れることはないだろう。

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