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794.寿司好きのシェパードとかき氷の森(保存)
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と/り/な/ん(実/況)
2017/01/01(日) 18:10
「お待たせしました、塩の肉盛り合わせでーす」
俺達を挟むテーブルに皿が置かれ、俺達は数瞬見つめあう。俺が何か言う前にテ仮ラ面ゾーが一つしかないトングを持ち、肉を網の上に乗せ出す。
「で、なんだっけ」
「俺の交遊関係の話」
「そうだった」
四枚しかないタン塩を乗せると、ソーセージを網の端に転がし、鶏モモ肉を適当に並べ出す。すぐに網の上はいっぱいになった。
「と鶏りな唐ん自身に交遊関係の広さの自覚が無いことがマズイと思うんだけど」
「そーかぁ?」
「だってさ、この前懇親会あったでしょ。俺、主催の人としか連絡先交換してないよ?お前は何人と交換したよ」
「え?……なな、はち、九人。九人だった」
「多いわ!多すぎるだろ!」
テ仮ラ面ゾーは苛立たしげにトングで網を叩く。火力が弱いのか肉は冷凍されていたのが溶けるだけで、全く焼ける気配が無い。俺はテーブル横のスイッチを捻って火力を上げた。
「でも今は四人くらいしか連絡取ってねえし。結局一通り一回食事した位だし」
「飯食いに行ってんのかよ!」
「舞台観に行こうぜって誘って行って連絡してねえ」
「舞台行くって相当仲良いだろ!」
「そーでもねえよ」
てらてらと油がにじみ出した肉を裏返す。良い焦げ色だ。鶏は網に貼り付いて少し裂けてしまった。鶏肉に苦戦するテ仮ラ面ゾーを眺めながら、もやしナムルをつまみにビールを口にする。
「俺は連絡取んなくなってなあなあになることが多いから。お前も充分顔広いだろ」
「そうでもないよ。俺はその場で仲良くなるだけで連絡先とかは交換しないから」
「その機会が多いだけ?」
「まあ、そうね」
良い感じに焼けた肉を俺の方に寄せてきたので、黙って取る。タレをつけて熱々を一口。
「あっつい」
「焼けてる?」
「ん、うまい」
テ仮ラ面ゾーも自身の皿に肉を何枚か取って食べ始める。俺ももう一切れ食べてから、トングを受け取って空いた網の上に肉を置いた。
「元恋人と友達に戻れるってのがまずスゴい」
「俺は別に来るもの拒まずだし」
「F/ac/eb/oo/kでいいね送り合う関係って絶妙なラインだと思うぞ」
「……あのなあ」
焼けた肉を自分と相手の皿に勝手に入れつつ、俺はテ仮ラ面ゾーと目を合わせた。
「情報収集は大事だぞ?」
「テ仮ラ面ゾーは現代社会から離れております故」
「どこの貴族だ。……総合的に好かれる人間になるには色んな人間と接してリサーチするのが手っ取り早い」
「まず好かれようという気持ちが無いんですが」
「出る杭は打たれるんだよ。普通で平凡、平均的な人間になるための一歩ってやつ」
「厨二病かな?」
「言うな」
適当な肉を口に入れれば、ハラミだった。分厚い肉がじわりと味を滲み出して来てうまい。
「でもと鶏りな唐ん、平凡じゃなくて副リーダータイプじゃん」
「そういうお前はリーダーばっかり」
「だってやる人がいないから」
「俺もだよ」
また肉をつまんで、ビールをあおる。
「と鶏りな唐ん本当さ、刺されないように気を付けなよ?」
「刺されるほど好感度下げねえから」
「その台詞がもうね、ヤバイよ」
「善処する」
俺は再びトングをテ仮ラ面ゾーに渡して、肉を食べる作業に戻った。
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