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Forest Gump
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12/04-12:21

#今より少し前、秋の頃の話。 
鈍色をした鉄扉が、薄闇の中にたたずんでいる。屋上へ通じる重いドアを開けて、俺は屋上へと出た。
夜の学校に俺は忍び込むことがある。星空を見る為に。屋上の鉄柵に背中を乗せて、背を反らせば、目の前には夜空が広がった。
東の空高くで一番明るく輝く星。あれが、ペガスス座。秋の夜空は明るい星が少ないから淋しい。でももう一月もしたら、少し寂しげな秋の星空を追うように、東から冬の星座たちのにぎやかな顔が見られるようになるだろう。そう、澄んだ冬の空には、合計7個もの1等星が燦々と輝く。そのなかに、ふたご座のカストルとポルックス。二つの星がある。そう、それは俺と×××のようだ。その星までの距離は、此処から2800光年。だから俺が光の速度で飛んで向かっても、辿り着く前に、死んでしまう。あの子に会えるなら焼け死んだって俺はかまわないのに。星は俺をそこへ連れてってくれない。
俺が吐いた息は、寒さに白く凍った。屋上は見晴らしが良い分吹く風も強く、秋と言えども夜は大分冷える。風がふけば、まるで幾本の槍が身体を突き刺すようだ。それなのに、星の大きさは、地上から見る星と少しも変らない。 
手を伸ばしても星を掴めそうにはなかった。

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