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Forest Gump
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143 :
加
06/22-03:31
「私は物心がついた時から、大いなる知と力を持ち宇宙を支配する存在を信仰していました。
名状しがたき「別の存在」が、遠くない未来、宇宙より遥々遠くから、きっと我々を救いに来て下さると。そう信じて、祈りを捧げてきました。
けれど、神とは何もしてくれるなと畏れ敬うものである事も――、同時に教わってきました。」
神は居るのか?――と問う声。
その質問に答えて、口を閉じる。すると再び沈黙が落ちた。
相手が聞いていたのかどうかは分からない。そもそも問いの答えになっていたのかさえ。ただ時折ライターの蓋を開け閉めする音が聞こえたので、男がまだ眠りに就いていない事だけは分かった。
薄く開いた唇から小さな吐息が溢れた。踵を返し眠る男に目もくれず早い足取りで部屋の入り口へと戻る。そのままドアノブを回し部屋を出て行こうとした。
「……近々、この周辺に集積体が訪れるそうですよ。
おやすみなさい。」
部屋を出て行く間際に昼間機人から得た情報を告げる。何故忠告めいた事を口にしたのか自分自身でも分からない。親切にしてくれた事への礼のつもりだったのかも知れない。そっけない挨拶を残して部屋を後にした。
事務所を出て、男の言っていた4階の奥の部屋へと向かう。カツカツと、コンクリートで固められた階段を上る響く足音が、 鼓膜を振るわせた。そして廊下に出ると其処には見知らぬ男達が数人待ち構えていて、目を見開く。
名前も顔も素性も知れないが、男達がどのような人間なのかは直ぐに察しがついた。如何にも柄の悪そうな風体をしている。その様な男達が丸腰の頼り無さげなよそ者に出くわしたとあれば、どうするかは言うまでも無い。その上純正の銀でできたロザリオをぶら下げていた日には奪ってくれと言っている様に男達の目には映ったのだろう。もしかしたら今日街の何処かで出くわし、その後を付けられていたのかもしれないが、そこまでは分からない。
逃げ出そうにも狭い通路ではそうも上手く行かない。どうしたものかと頭を悩ませる。男達が何か喚いていた。身ぐるみを剥がそうとひとりの男が手を伸ばす。そのまま思わず反射的に自分自身を庇おうとして出した左腕を掴まれた。その時だった、意識が一瞬暗転したのは。
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