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Forest Gump
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07/23-13:38

自然の輝きを打ち消すように晧晧と瞬く人口のきつい光は、人間が宇宙の美を汚しているようで好きではなかった。この街がただでさえ人の欲望で成り立つ都市だと感じていたから、尚更だった。夜になれば明々と輝いていた高層の建物の間を抜けていく。現在は見るも無惨な痕が残る街を駆け抜けていく。

かつては、自分の故郷である、この街は、沢山の人で賑わいでいた。それに伴い道は整備され、空を突くような高層ビルが立ち並び、理路整然と人や物が行き交っていた。けれども突然現れた集積体により街はすっかりと変わり果てた。まず集積体の出現に街の高層ビルの窓ガラスは割れ、町中の機械が作動しなくなった。集積体を目の当たりにしたある者は発狂し、ある者は死に伏せ、大勢の人間が何らかの形で心身に異常を来たした。…不思議な事に自分の身体には特に異変は起きなかったが。
そうして街から人が居なくなった事で街の機能は停止し人口の灯火が消え、生まれて初めて星空というものを見た。街のネオンは何時だっても煌々と光り、その光明が夜空をも赤く染めあげていたから。廃ビルの屋上から見上げる満天の星空は、街を出た事のない自分には初めての光景だった。

「あれが星ですか…。綺麗ですね。」

見渡す限り、満天の星空。地上では遠くに見えた星も今は近くに感じる気がする。自然と溜め息が溢れる。周りに人はひとりっこいない。いや、もしかしたらこの街にもう人は居ないのかも知れない。頭がくらくらした。

「もうこの街には誰も居ないのでしょうか。何だか、……気がしてきますね。
そうか、……そうか。」

自分が生まれ育った街が好きではなかった。自然を一切切り捨て人の欲望に塗れ、何より自分を厭うこの街が嫌いだった。街の隅に建てられた教会でひっそりと神に祈る生活を送っていた。けれども望みは叶った。そして思う。きっとアレは、進んだ科学力により栄え過ぎた人類に罰を与えにきた存在だったのだ。つまりは、自分がずっと待ち望んでいた神なのだと。

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