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┗Forest Gump(104-108/152)

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108 :
03/23-15:35

校内でも1番高い塔の屋上は普段は授業以外立ち入る事を禁じられている。けれども、先日の天文学の授業の際に教授の目を盗んで細工をしていた為、易々と忍び込むに成功した。窓辺の直ぐ側に腰掛けて、春の星たちがいっぱいに輝く空を見上げる。先ず目につくのは、春一番を告げる星座である北斗七星。まるでひしゃくのような形をした北斗七星が、春先の宵にひしゃく一杯に貯えた春の香りを地上に降り注ぐような形で、北東の空高くで輝いている。それを見て、まるで眩いものでも見るように目を細めた。
「…あーあ。授業サボちゃった。明日、皆に怒られるかなあ。」
今日授業を休んでしまった事を悔やむその表情は暗い。目元は泣いた後のようにうっすらと赤く染まっている。春先とは言え夜はまだまだ冷え込み、吐く息は白い。凍える手を温めようと手を擦るも赤くなるだけで、息を吹きかけてみたところでちっとも効き目は期待出来そうにない。何処か呆れたようにため息を付き、一度手元に落とした視線を再び上空へと戻した。

昨夜の事を思い出す。
優しくて、可愛くて、儚げな――ひとりの少女のことを。

ある目的の為に昨夜は禁じられた森に行った。その森は常々教授から行ってはいけないと聞かされていたが、それでもその森へ行かなければいけない用事があった。もっと言うならば絶対に人が来ない場所へと行かなければならなかった。――それがまさかあんな事になってしまうなんて夢にも思っていなかった…。
校則を破ってしまうことへの罰悪さと森の生物に襲われるのではないかという不安を感じながら森へと入る。そして人気のない奥地へと来ると安心したように一息付いた。この場所なら余程の事がない限り人が訪れる事はないだろう。安堵から身体から力が抜け、そのまま一本の大樹の幹に凭れ掛かる。他愛もなく上を見上げると視界には膨らんだ蕾みが飛び込んで来た。春の訪れを実際に目の当たりにして、目を瞬かせる。春が来た。ただそれだけのことが嬉しい。しかし少しづつ春らしくなって来たと言えども夜はまだ冷え込み、息を吐けば白く染まる。これはさっさと用事を済ませた方がいいな…、そう思った次の瞬間のことだった。
「どなたですか?」
時折木々のざわめきやよく分からない生き物の鳴き声が聞こえたが、それも微かなもので森の中は静かだった。その森の静寂を破るのは少女の甲高い声。震えているものの、その声は良く知った少女のもので。……誰も来やしないと思っていたのに!瞬時迷いが生まれる。が、それを直ぐにかき消し、相手の前へと姿を現し――。

(略)

目の前の青年が取り出したのは一冊のノートだった。もしかしたら危険な物を持ち出してくるかもしれないと警戒していた為、ポケットから取り出されたノートに目を丸くする。しかし直ぐに何のつもりかと言わんばかりに青年を睨んだ。
「これは彼女の日記帳だよ」
すると返ってきた答えにまたも虚を突かれる。予想外の返事に唖然とする。けれども背後から聞こえて来た声にハッと我に返り、改めて青年の手にあるノートまじまじと見つめる。こくりと喉を鳴った。
正直に言えば少女のこころを覗きたい、彼女が自分をどう感じているのか知りたいが――、良心の呵責が青年の悪魔の様な囁きに頷く事を邪魔をする。yesともnoとも言わず、何処か悲痛そうにも見える険しい顔をしてノートを見つめるだけだった。

なんて、そんなのは建前だったの。彼女にどう思われたいのか気にしていただけだ。出来る事なら彼女に良く思われていたい。いや、彼女以外の人達にも良く思われて生きていたい。そう思っていた。
だからこそ?だからこそ、目の前にあるノートが気になった。彼女にどう思われているのか、その事を知る事が出来るというなら。
私ってば、――最低だ。

背後に居る少女が何か言っている。自分の肩を掴み、自分に何かを伝えようとする声はとてもか細く聞き取る事は出来ないが、きっと日記を見ないでといった内容だろう。彼女が必死に何かを訴えようする合間も視線は日記に向かう。彼女の方を見ずとも彼女の浮かべている表情は想像は付いた。きっと、彼女の事を考えるならこの誘いに乗じるべきではない。そうは思うものの、思いとは裏腹に青年の囁きに最後まで肯定も否定もしないまま、青年の手にあるノートを請うように無表情で手を差し出して。

ああ私、最低な事をした。
赦されない事をしてしまった。

[][][]

107 :
03/23-15:33

彼に背中を押して貰って彼女と話しをしようと覚悟を決める。
ひらひらと手を振って別れを告げて、慌てたように教室を出て行く。

それにしても彼には助けられてばかりだ。
勿論彼にはそんなつもりはないんだろうけど。彼が困っている時には今度は私が助けてあげたらいいな。彼だけじゃない、困った私を助けてくれた人達にいつか恩返しを…。

その為にも、私は彼女とちゃんと話をしなくちゃ。



けれど何故頬を涙が伝っていくんだろう。そう不思議に思いながら、天文台の塔を駆け下りていく。階段を一段二段降りていきながら。

だって悪夢は終わった訳じゃない。
悪夢はまだ始まったばかり。

彼女と話ししようと覚悟は決めたけど、まだそれだけ。何の解決もしていない。塔の出口は直ぐ其処だけれど、本当の出口はまだ見えそうになかった。

[][][]

106 :
03/23-15:29

>何時か見た夢の話し。

夢の中で私はお魚で、青くて大きな鱗と、何処までも泳いでいける尾びれを持っている。力強く尾びれを振って、透明で、澄んだ海のなかを泳いでいた。
水の中を掻き分けて、自分でも驚く程の早さで進んでいく。私は、自分の思うままに泳げた。自分の好きなように泳げるのは、とても気持ちよい。
周辺に自生している生き物や自由気ままに泳いでいる魚達も生命力に満ち溢れていた。
まずは珊瑚の美しさに目を奪われる。赤や黄色、ピンクの繊細な花々が、水中に咲き乱れているのが見える。そして、その珊瑚の花の森に隠れて、大小さまざまな原色の魚達が泳いでいた。その数、その種類の多さは、空に輝く星にも負けないだろう。
鮮やかなブルーのソラスズメダイが横切っていった。黄色の魚体に縦縞のカゴカキダイ、赤紫のメギス。海の星と呼ばれる彼等。
私も魚の群れに混じり、突き進む。海の中を幾筋の光が流れる。
柔らかく射し込む陽光が水中で屈折して、神秘的な光景を作り出していた。
青く彩られた海の世界。海中から見上げる水面はステンドガラスのようで、きらきらと輝いている。

素晴らしかった。此処では、私は何でも出来て、此処の生命は皆生き生きとしている。

けど、私は気付いてしまう。此処では私の居場所はないということに。
そのことに気がついたら、突然呼吸が苦しくなった。先程までは、上手に呼吸出来ていたのに、出来る気がしていたのに。
自分を誤摩化すことも出来なかくなった私は群れを離れ、ひとり海の底へと沈んでいく。私のいた群も次第に足並みが乱れ、ばらばらに散っていった。 そして統率をなくした彼等はやがて争い始める。魚達はお互いの牙で傷を作り、 乱闘に巻き込まれたある魚は珊瑚にぶつかり血を流していた。突如表れたジンベイザメに群の一端が襲われているのが、視界の端で見えた。

ばらばらになっちゃ、駄目だよ。海を汚したら・・
夢の中の私は、ない腕を必死に伸ばして、何処にも届かない。何も掴まない。一生懸命に息をしようとしても、全然上手くいかなくて、苦しそうで、もう限界だった。

帰りたい、帰りたい。
ここでは私は生きていけない。

深く沈んだ海の底、見える筈もない水面で、ふたつに髪をくくった女の子が笑っているのが見えた。

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105 :北伊
03/23-15:27

『白い旗』

初めから勝敗の分かっている勝負なんてしたくない。
…傷つきたくなんかないんだよ。

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104 :北伊
03/22-05:44

やっぱり俺、お前のことが好きだなあ。
会いたいなーと思った時に来てくれたから、俺泣いちゃそうになったじゃんか。
クリスマスの時もそう。昨年は来れなかった兄ちゃんの代わりにサンタさんをしてくれたよね。
多分お前にはそのつもりはないだろうけど、俺ううん彼女は大分救われてたりするんだよ?
ヴェー、もし惚れ薬を持ってたとしても俺には使えそうにないや。今のままで十分…、と言ったら嘘になるけどさ。今の関係を壊せそうにないよ。臆病だなあ俺って。情けない。

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