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懐中仕掛けのファフロツキーズ
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21 :
英
08/08-15:39
馬鹿みたいに燃費の悪そうな純白を彩るオープンカーのバックを構えるには些か不釣り合いとも呼べる見窄らしい空き缶を、それはもう呆れる程に繋いで。ギャラリーからは餞別とでも言いたげに真珠宛ら七光りに煌めく生米の雨を全身に余す所無くぶつけられながら、まだ視ぬ世/界の果てまで失踪出来たなら、今度こそ幸せになれるのだろうか。
不明瞭な至福へのカウントダウン。欠伸を出すなと言う方が無茶であろう平坦な道程。怠惰な微睡みに打ち勝てず居眠りしちまうか否かのギリギリの意識を玩び、ふと余所見をすれば傍には喉を痛める排気ガスのカーテン越しに燻る助手席。深海の星屑が雲海を仄かに照す月明かりの恩恵を目一杯に賜り、キラキラ耀き厭味ったらしく自我を主張する忌々しい存在。そんな継ぎ接ぎだらけの紛い物、舌を晒して中指も立てて、締めにド汚ェスラングの一つでも差し上げて、そして保留扱いにしておけば良い。俺はただ、不幸にも決して居心地が好いとは言えないだろう年季が入ったトランクに詰め込まれて泣きじゃくっていた不確かな荷物を迎えに往くだけだからな。標識を跨ぐまでの間隔を目印に規則正しく窓を横切り往復するワイパーの慣性を借りて、アレの涙粒を餌と見なしたアスファルトの表面が、不自然なまでに濃く暗くどろりと波打つ。声を殺した啜り泣きをストップさせるのは困難だろう。幾多の仲を執り持った敏腕の仲介役ですら手に負える訳が無ェ。あいつのサイドブレーキに触れられるのは、雲が千切れて雨が昇ろうとたった一人、俺だけだ。
さて、後少しで遠い遠い彼の目的地へ到着だと。過程を経て既に自分だけしか乗っていないこの癪に障る程純白めいた揺り籠を、甲高くガラガラと奏でる乾いた子守唄に合わせて揺らし続けているのもまあ、悪くは無い。
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