一覧
┗
懐中仕掛けのファフロツキーズ
┗28
28 :
日
08/21-19:59
漸く朧灰が払拭されたかと思えば望んでも居ない霹靂が宵鏡ごと天涯を割る。何時かの罪人が得手とする粗野な愚行の数々が、風流からは程遠き稲光を焼付け網膜から頭蓋へと響き渉る。鼓膜がその厚顔無恥な振舞いの予兆を報せる度に、私は前髪に隠れた眉間の皴を甲斐甲斐しく刻み、育て、殖やして往く。姦しい事この上無い。あれ程までに切望した暁は天道へと面持ちを変え、私に絶望しか寄越さなかったのです。一体何を以て希望と宣うのでしょうか、舌先三寸より練出された妄言ではありませんか。只管眼窩が眩むだけのそれを親身の鉛刃で番瞼をも抉じ開け斜陽の兆しが訪れるまで、私の水晶体に独善を降り注いだ結果、常為らば映るはずの私が落日の刻が来ようとも、夜更けまで彷徨子の恥辱を懐き黒に惑わされて間も無き境界に喰われる刹那まで、当の私自身と来たら、情けなくも己の足許すら認識出来なかったのです。
朧気ながら漸く自我を取り戻せた私を嘲笑うかの如く、周りを巡回する雑魚に泥土の化粧を塗り付け硝煙の御簾を一閃で切り刻もうが焦燥の余韻が未だ肺腑に沈澱したままなのは、私の背後を獲る彼の御方の所為。何故、私が征する僅な刻まで貴方は煌々と耀いて居るのでしょうか。虚空へと旋回する空の禅問答を嘲笑うかの様に私の現身を蟒蛇が絡み付く感触を真似つつ侵食し、軈ては私を器のみとする。輪郭さえ在ればそれで構わないと、戦慄を憶える程の満面の笑みを称えて。
どうして巻き添えを喰らう嘆きを蒔けば貴方は隠れるのか。逸そそのまま朽ち果てては如何でしょう。刹那の反転さえ過ぎ去ってしまえば、貴方が去れども私は確かに存在したままで。ですが窶れた物入れとして天寿を全うされた事実に、肩を並べて迂回するなど私目には到底無理な所業であると、何故悟っては頂けなかったのでしょうか。私が懐いた貴方さえ存在すれば、それで全て満ち足りたと云うのに。愉悦を辛酸に覆す貴方そのもの、刹那に轟く稲光は、湿路亡き青天を二分した後、朧雲に呑まれて声すら出せずに沈滅されれば微笑みを。これで漸く陰だった私が陽だった貴方の全てを頭から爪先まで一息に捕えて袂の駕籠に閉じ込めておけるのですから。そして誼の成之を知る遺憾とも下らない柵や原形の遺香をゆらり漂う一筋の棚引きすら見逃さず淘汰した曉にはどうか、貴方を。
[
返][
削][
編]
[
戻][
設定][
管理]