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懐中仕掛けのファフロツキーズ
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30 :
南/伊+西
08/24-08:05
まだ完全に熟れ切っていない少年の柔肌、意思の強さを顕した褐色にも引け目を取らない滑らかな皮膚を退紅色の斑模様へと染織する作業に耽て征けば、決まって何時もは白い脂肪のコットンに包まれながら気道の最奥へと恥ずかしげに埋没している愛らしい喉仏が、弓形を描く子供の背に呼応するかの様に気紛れにひょっこりと顔を出す。成長過程の目安とも云うべき気管、普段は見せない乳白色の塊が大人によってもたらされる等間隔を刻む律動に促されるまま、御世辞にも成熟とは形容仕難い独特の青さが翳る琥珀色のカーテンを捲り上げ、未だあどけなさを遺した輪郭が生々しい布地越しにくっきりと浮き彫りになり皮肉にもその姿形を主張する。
豪奢と清廉さを併せ持つベッドを軋ませながら双方の五臓六腑を媒介として厳かに行われる擬似的な捕食行為に我を忘れて没頭する眼前の大人によって、望まぬ熱に浮かされた華奢な身体が肩を揺らして浅く呼吸を繰り返す度、第二次性徴期の幕開けを伝える斥候が苦悶を彩る囀りに合わせ、メトロノーム宛ら細首の表面で上下に転がる単純運動に励む。寝室と呼ぶには些か無機質さが圧倒する宝石箱の様な空間、格調高い金銀宝石が塵填められたそれを、交わる泥臭い息遣いで模様替えを試みている様な気高く薄汚れた儀式の中、終始見られる彼の機械的な筋肉運動によって診られる反応。第三者から見れば、それは脊椎動物に該当される一個体として、至極当たり前でもある膨大な生理現象の内のたった一点。例えるならば道端に生える雑草と同価値程度という見解。そう、彼等の本能に殉ずる一連のメカニズムは、一時の気の迷いと云う点に於ては至って一元的でシンプルな模範的解答である大前提に加え、事態を完遂したとしても周囲へ及ぼす影響力など殆ど無いモノなのだと指し示す、数え切れない程のその他大勢。対するはそんな野次馬の群れで構成された満場一致の空気に食らい付く多勢に無勢に紛れたたった一人。行為の傍ら安直な一般論に無言で異議を唱え反旗を翻し続ける当事者が呈示した対抗見解との整合性が、もし仮にほんの僅かでも立証されていたのなら。
或いは、もう何もかも全て手遅れだと気付く一歩手前。腐蝕し爛れた享楽の泥濘の底へ底へと蕩ける様に自身を融和させつつも、特異点の悪名を賜り落日へと歩む末路には頑として背を向け、精神的安穏の脇道に逸れる最良の選択を以て、大人は落涙を恥を堪える未来を回避出来たのかもしれない。
#特異点者A氏の破滅的な見解。[>>0,0029]
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