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クリンベリルの名を捨てて
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46 :
米
11/06-22:37
(レトロと呼ぶに相応しく黴臭い町並みを背に夕映えも疾うに沈んだ頃合い数刻前から絶え間無く燻り昇る硝煙に陽と見紛う程に緋色に染まった月を窮屈なマスクに開いた虚ろな二穴の下から瞬き零す空色で一瞥を呉れた後、厳めしく誂えられた獅子のレリーフが刻まれた手摺り越し眼下見えるロータリーへと視線を移し著しく増え行く死屍累々を傍目にティーセットを構える紳士へ変わらぬマスクの表情の代わり揶揄の念を込め肩竦め担いで居たコートと同色のチェンソーを降ろし。耳澄まさずとも届く阿鼻叫喚の音色をBGMに鼻先でハロウィンソングを奏でながら足下に敷く所々赤錆を浮かす過ぎた年季に幾分頑固さを増したエンジンのスターターを軽快に引き上げる作業を丹念に繰り返し続ける最中、徐々に背に寄せ集まる数多の禍つの気配にふと面を擡げるもそれが空間漂う邪気から凶刃と姿形を成し頭部を目掛け注ぐ刹那に排煙と同時唸りを上げたエンジンに見えない口唇を弓なり描きハンドガードへ足先掛け手摺り向こうに蹴り放ち自身もテラスの床を蹴り黴生したコートの裾ごと自身を踊らせそれを追い。一塊と存在していた筈の異形が四散し新たな複数の個として我が身追い迫るのに空に身を捻りそれらを足場と捉え落下を早め愛用のチェンソーを指肢に掴むとスロットルを全開に、最早眼前と近くなるトップハット目掛けそれを振り翳すも星を織り込む寒色の外套裾は傍ら掠め僅かの軌跡残し空に舞い立ち代わりに回転刃は先迄宛らの観覧席であった空席の天板に突如と競り上がり現れた異臭を放ち沸き出す異形を縦から真っ二つに切り裂いて。轟音響かせ天板を盛大に深く凹ませながらの着地に大股に開いた膝下に鈍く残る振動と腕にの中唸る回転刃を抱えながら異変に気付き群がり始めたモノへ得意と向け顎先持ち上げ見せて、バスの天井縁を肉の削げた指先が掴むや否や列なる頭へ爪先で踏み込み順序宜しい階段代わりとステップ刻みながら降り低く位置した最後の一つを後ろ蹴りに砕き弾む足取りのまま石畳へと降り立つとロータリー囲い此方伺う蠢く骸達を見渡し自身の顔面を覆うマスクを横へと移し晒された血色の薄い頬に笑み刻みコートの裾を摘んで大仰な仕種でお辞儀を振る舞い声音に艶を乗せ囁き零し)
…Shall we Dance?
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