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だいたい調理部日誌!
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26 :
イヴァン☆
10/11-05:19
園芸部って、幽霊さんを含めても本当に部員が少ないんだ。
やっぱり運動部なんかが人気だし…帰宅部は美術部に多いみたいで寂しいな。
だから、仲良くなりたい。
この前部室に入った時に、アーサーくんがまるでお腹いっぱいの猫みたいにやわらか~い顔して笑ってたんだ。
彼がにこにこするなんて珍しいから、きっと機嫌がいいんだ、チャンス!と思って早速話しかけたんだけど…。
彼椅子から落ちるんじゃないかってくらい動揺してから、「何でもない」って強い口調で否定されちゃったよ。
でもすぐに、まずい!って言わんばかりの表情してからモゴモゴしてて…うん。
とっても気まずいなあ。
僕はアーサーくんといつもこう、何かが噛み合わない。お互いに、多分彼からも嫌われていないと思うけど何を話したらいいか、全くわからないんだ。
もっと仲良くなりたくて話すけど、会話の端々で油をさし忘れた自転車みたいに耳障りな音が鳴ってて、不自然で心地よくないテンポ。
けど僕は決してアーサーくんが嫌いなんじゃない、よ。
仲良く出来ない子は要らないよねって考えてた僕だけど、仲良くしたいなってお互いに考えながら仲良く出来ないなら、要らないってぷちっと希望を潰すには早い気がするんだ。
フェリシアーノくんと話すようになって、少しずつ頭の中で考えが変わっていく。だって彼は本当に遠慮がなくて甘えん坊で、ついつい色々許しちゃう人だし…だから僕もあまり構えなくていいんだなあって。
それに、ね。
アーサーくんがとても親切なのを僕は知ってる。
上手くいかなくても、とっても頑張り屋さんで、真面目で、お花に触る指は優しい。そしてだいたい柄が悪くて…あれれ?褒めてないかな?うふふっ。
つい最近、2人で肥料を運ぶ時にいつも通りなんだか妙に会話が弾まなくて、ぎこちなかった。
僕達2人はいつもそう。
だからアントーニョくんが顔を出した時に、実は2人揃って肩の力が抜けちゃったんだあ。
アントーニョくんは気づかなかったみたいだけど、なんだか2人して馬鹿みたいだなって少し顔を見合わせて笑ったよ。
僕達2人だけならとっても気まずくて、ぎこちない空気は、間にアントーニョくんを挟むとなごやかになる。
アーサーくんってアントーニョくんに、ちょっと複雑な思いがあるみたいだけど…ふふ。
園芸部で3人でいる時には、けっこう仲良しさんに見えるな。
アントーニョくんが唸って額を机にこんにちはってした途端に、アーサーくんが小突く。僕は顔を上げたアントーニョくんに、間違った場所を指でなぞる。
それを見て、わあわあ騒いだアントーニョくんが一生懸命消ゴムを使って机が揺れる。
アーサーくんが持参した紅茶が零れてキーホルダーすれすれにかかったみたいで、彼は半泣きで胸ぐら掴んだ。アントーニョくんが謝って、ああそうして脱線していく…。
僕はティッシュで本当にちょびっと濡れたキーホルダーを拭いながら、2人を見た。
アーサーくんのあんまり必死な半泣きの怒り顔と、胸ぐら掴まれて揺すぶられて作文のせいで半泣き困り顔のアントーニョくん。
やがて視線に気付いたアーサーくんと目が合って、視線は僕の手の中にまで落ちていった。
キーホルダー、大事なんだよね。
眉を八の字にして気恥ずかしそうに、蚊の鳴く声よりも小さく「ありがとう」と呟いた彼は、まだアントーニョくんの服を離さないままだったので流石に僕は噴き出していた。
その後は僕に笑われたことにショックを受けたらしいアーサーくんが白目で固まり、アントーニョくんが訳もわからず励まし、火に油を注いだから結果騒ぎは大きくなっていく。
ああどうしよう…宿題ができないよ。
脱線に困った僕は、小さい頃姉さんに言われたなまはげ的な言葉を思い出して、2人に頑張って伝えた。
途端にとっても静かになったから、姉さんはやっぱり凄いなっで嬉しくなっちゃった。
ちょっと仲良くなれたかな?
作文を3人で頑張ろうね。
今はまだ縮まない距離だけど、僕もいつかアーサーくんに頭を小突かれちゃう日がくるかなあ。うふふ。
そしたら、僕もお返しに小突いてみようかな。
楽しみだなあ。
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