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どうしようもない私へ
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151 :
日
12/30-23:43
私で、言葉を紡ぎましょうか。
他の誰でもない、「私」の姿で。
*
さて、
私は相変わらず、悲しいのです。哀しいのです。何故か?夏に恋をしていたあの人の恋が、覚めてしまったから。
私が一番にお慕いしていたのに、(とかなんとか言ってこれは私の勝手な解釈ですが、)彼の方は遠くへ行ってしまわれました。
私のある種の夢はひとつ、秋に叶ったのです。思いがけない形ではありました、私の望んでいた形ではありませんでした、それでも私の夢はひとつ、叶いました。
それで満足すればよかったのですが、そうは行かず。私は彼の方をもっともっと深く愛するようになりました、一種の優越感すら感じながら。たくさんの方に愛される彼の方のお側に、私は居るのですよ、と。烏滸がましいお話です。
彼の方はとても自由な人でしたから。たくさんの方を愛しておられました、常に周りに人がいて、彼の方は彼の方の人間関係を築いて行きました。
私がいる世界とは、別の場所で。
そうなのです。
もう私と彼の方では、住む世界が違うのです。私は過去の世界に住まうものですが、彼の方はもう違う。新しい場所へと踏み入ってしまわれました。彼の方がお引越しの準備を、冬頃から始めていたことを、私は知る由もなかったのです。
彼の方が愛したのは、夏の子でした。
夏の子を愛していらっしゃったのです。そしてその夏の子に、無償の愛を捧げ続けた彼の方に、私は惚れ込み、感化され、溺れました。ですがあまりにも、出会うのが遅すぎた。これ程までに、自分のタイミングが悪かった事を悔やんだ事はありません。
もう、夏の子は置いてけぼりです。
私は変わらずに、夏が似合うあの子を愛しております。かつて彼の方が愛したように。だけれども、彼の方が今、夢中になっているのは。彼の心を、彼の脳みそを、彼自身を虜にしているのは、他でもなく「私」なのです。
「私」に恋をしてしまった彼の方。
そうして私も置いてけぼりに、夏の子を愛する彼の方をよく理解していた私。ですが、「私」を愛する彼の方を、理解するまでに、まだ至って居ない。「私」を愛する彼の方のお側に立つのは、私は適任ではないのです。相応しく、ないのです。
なんて悲しいことなのでしょう!
彼の方を愛しております。
ですが私は、夏の子も愛しております。
これは私の身勝手な我儘です。だけれども、やはり、悲しいのです。何故もっと早くに出会わなかったのでしょうか、こうして何百年の時を経たにも関わらず、私が彼の方と関わったのは、ほんの数年の間だけ。その数年間ですら、彼の方はどんどんと前へ進んで行く。より一層、煌びやかな場所へと進んで行くのです。
私が、過去の彼の方を想い頭を悩ませること。それは、私が「夏の子」を愛する限り、ずっと続くことなのでしょう。
それ程までに彼の方は、私の中で大きな大きな存在となってしまってのですから。たった数年の間で、私の基礎の部分を変えてしまわれた。彼の方は知らない、私だけが知っていること。私の心の奥底には、今も強く、強く根深く、夏の子を愛した彼の方が存在しているのです。
そうして私は、私が愛する最愛の方と、夏の子を愛する事を決めたのでした。
「私」を愛する彼の方のことを、この先もずっと、ぼやけた夏の中から、眺める事となるのでしょう。
彼の方との、黄金色に輝いた夏の日々は、私が忘れない、忘れてはいけない、一生の物なのです。
愛しておりました、フランシスさん。
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