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どうしようもない私へ
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162 :
摩
01/07-08:20
【夏】
夏は、この世界の私にとって恐らく、数百年程前から、一等特別で、一等大切な…意味のある季節だ。
その話は後回しにしようか。
そうだな、夏は好きだ。
暑いのにはどうにも慣れないけれどね、私は夏が大好きだ。六月の終わり頃に聞こえ始める蝉の鳴き声…夏が来るんだと、わくわくさせられる。夏が来て、真っ青な青い空が広がり、木々が青々と生い茂って、入道雲がどっしりと構える。そんな道に出くわしたとき、絵のようだと、写真のようだと、まるで作り物のようだと、思った事があった。だけれどそうではない。あれらは全て自然が生み出したものだ。その風景を思い出すと、夏が恋しくて泣いてしまいそうになるね。
夏は本当にいいものだ!
可能性が無限に広がっている季節だ、子供が主役になれる季節だ。思い出してはごらん、小さな頃、夏が大好きじゃなかったろうか。裸足で駆け回って、セミを追いかけて、スイカを食べて海へ行って、花火を見上げ祭りに興じる…夏は楽しいことで溢れかえっているな。
さてところで。
私の愛おしいあの子の話をしよう。夏が誰よりも似合う、夏の世界のあの子は、夏生まれではない。
夏の生まれでもないのに、あの子には夏がよく似合うんだ。何から何まで夏色の人間だと、私はそう認識しているし、兄さんもそう思っているんだろう。
兄さんの完成された世界の中に、いくつも出てきた夏の世界。私は夏の日に、それらに虜になった。私が総じて彼らと出会ったのも夏の、夏の一番始めだった。翌年、また私は兄さんの世界に魅せられた。それも夏の日の話で、兄さんと私が一番近い所に在ったのも、夏の日の事だ。
そして彼女が最も愛している大事な大事な兄様に出会ったのも…夏の事だった。
私はどうやら、この世界において夏に縁があるらしい。ふふ、今までの私は夏なんて大嫌いだったよ。なのに変わったんだ、私が何故ここまで変われたのか…あの子と出会ったからだろう。あの子と出会って、私は夏の世界に足を踏み入れる事になったのだからね。
夏の世界にいると、やはりあの子のことを思い描かざるを得ない。そしてあの子に一番似合う季節は何かと聞かれれば、夏だと答えざるを得ない。
夏はあの子の為に存在するのではないかとすら、私は思えてしまうよ。
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