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どうしようもない私へ
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10/17-00:52



僕は時折思い出す。

氷点下で息をしていた彼女の事を。
暗いところでどこまでも白かった彼女の事を、思い出す。どこまでも白かったんだ、そう、相応しくない色だった。真っ黒な彼女に白は眩しすぎたのだと思う。逃げるように彼女は、白い部屋から出て行った。

幸せだったかい?
どうなのだろう。残された痕跡は跡形もなく、僕が指でなぞってもなんにも残っていない。彼女が巡り歩いた軌跡は、彼女の手によって掻き消されてしまったのだった。



彼女が帰って来る?

そんなのは許されない事だ。受け入れ態勢は一生整わない。僕は許さないし許されないし、もう違う存在なんだよ。
蓋の中でおやすみをしていて、綺麗なその二つの瞳は閉じたままでいい、夢から覚めることなんて無くていい、だってその方が幸せでしょう?
この世界は恐ろしいこと、怖いこと、目を瞑りたくなるようなことで溢れかえっているよ。
君は夢を見ていればいい。迷子になる必要はないんだ、あの日のままで、ね、僕の代わりにこれからもずっと、氷点下で息をしていてはくれないか。



覚めなくていい夢だってあるんだ。
彼女の手を引いてくれる人がいなかった、彼女はずっと、迷ったままだ。
(それでいい、きっと、それで、僕も君も幸せになれるでしょう)

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