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09/23-16:31

#。oO(価値観)


『で、話って言うのは?』

>乾杯、とグラスを鳴らしアクシデントに取られた水分を補給するや否や、正面に座る催促に似た友人の一言。空になった皿を横目に随分と待たせてしまったのだと場違いに考える。もう一口、喉を潤し漸く言葉を紡ぐ私はやけに単調に告げたのではないかと記憶している。

『奴と、恋人と言うものになったらしい』


>あまりにさらりと告げた私の一言にあっけに取られたように一間空けた後、おめでとう、と祝福の言葉に続けて『どの子?』と聞かれてしまう辺り品性を疑われそうだな。今はもう他にいない。割愛して問題はないだろう。

『そう…何にせよ、よかったわね!』

>笑顔でそう言葉をくれる彼女は人生においても、そして、恋愛においても私の先輩に当たるのだと酒に踊らされる頭で考えた。肴を口へ運ぶ度に減るサワーに、二杯目を店員へ注文する。


『で?幸せになれたのよね?』

>ぐび、と最後の一口を飲み干すと首を縦に振ることも横に振ることもできなかった。幸せでないはずがない、然し、幸せだと認めることもできなかったのだ。

>相談に似た愚痴のような其れを漏らす口は閉じることを忘れてしまったように回り続ける。悪酔い、だ。適当に入った居酒屋の、然程美味しくもない酒を煽りながらそれでも私の思考回路を麻痺させるには十分のアルコールを含んでおり、ベラベラと喋り続ける。勿論、話す気の無かったようなことまで。


『ネガティブに捉えすぎよ、それ』

『相変わらずよねぇ…そういうところ』


>ぐわんぐわんと揺れる頭に、それでも何故か悪い気分はしなくて、説教のような助言に耳を傾ければ嫌でも感じる価値観の違い。言葉ひとつでも、多数の捉え方が出来るのだと。そして私は、大半が九割方マイナスの捉え方になる。確かにわからかくはないのだ。彼女の言い分も、その可能性が限りなくゼロに近いと言うわけでないことも。それでも私は自己防衛に全力なのだと、嘲笑を漏らす。嗚呼、酒が進むな。


『アンタねぇ…そこは、素直になってみなさいよ』

>素直、素直か…素直になることはイコール我が儘に繋がってしまうのではないかと。虚勢で本音を押し込めるしかないんだ。否、我が儘を拒絶されたことがあるわけではないし優しい奴は受け止めてくれるのかもしれない。だが、其れが妥協だとしたら、負担になったとしたら。




>ああ、残念。時間だ。答えが出ると思って話したわけではない。ただ言葉にすれば聞いてもらえば少しは楽になるのかもしれないと思ったのかもしれないな。…酔っ払いの考えることはわからない。


『次は、惚気話を聞けることを期待してるわ』

>ひらりと片手を振る彼女はやはりお洒落で、大人だ。


>いつか彼女のようになれたら、なんて、叶わない夢を願うつもりはない。だが、そうだな…次会うときにはもう少し酒が上手く呑める肴を用意できるようにしてやるのも悪くないかもしれない。


>疲れ果てた私が、奴からの言葉に気付かず寝転けていた辺り、道は険しいだろうが。

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