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諦念
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12/23-13:44

涓滴岩を穿つ

この諺の意味を知った時、思い出したのはお前。

長い時間を一緒に過ごして、少し手を伸ばせば触れられる距離に居た。
横を見ればお前の笑顔。それが当然のことで自然のことで。
けど偶に、隣にお前の姿が無い時…俺の胸の中は何か足らなくて。

楽しそうに、時折懐かしんでは頬を染めて誰かの話をするお前の声を聞くだけで、やっぱり胸の中に隙間が出来て。どうしようも無い揺さぶりは止まらない。

少しずつ、お前の存在は俺に刻まれて居たんだね。
小さな滴が硬い岩肌を撫でれば、繰り返す内に形が変わる。
滴を受け入れる為に、岩は自らに穴を開け、誰にも見せたことのない深部へ誘う。恐らく、自身も知り得なかった何かを見付けることだってあるだろう。
優しく強く、それでも儚い滴はお前で。
強く見えても形を変えることを恐れる臆病な岩は俺。

このまま打ち続けたら、きっとお前は俺の胸の内を見透かすことも容易くなるだろうな。

…悔しいけれど、今はそうして翻弄されたって構わない。


マタドールの衣装に身を包み、ひらりと身を翻すお前の姿が眩しいよ、アントン。
俺の角で、お前の心を掠めるだけでも出来れば……

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