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Amour fraternel
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06/13-00:35


ここ暫くギルちゃんが構っていた猫が、何処かへ行ってしまったらしい。
最初はたまに撫でていただけで、それを心地好さそうに受け入れていた猫が徐々にギルベルトの周りを彷徨くようになって。飼わないなら懐かせないで、って釘を刺したのに、いつの間にやらにゃあにゃあ鳴きながらギルちゃんの部屋の窓を見上げる猫を見るのが日常になった。
黒猫は丸い大きな金の目をしていて、ギルちゃんに撫でられるとすごく、すごーく嬉しそうに鳴いていた。

結局ギルベルトは、猫を飼う事にしたらしい。首輪を買って、猫の細い首に巻いて、部屋に迎え入れた。猫の毛で家が汚れるから嫌だったけど、優しい顔して撫でてるギルベルトを見ると小言は喉の奥へと仕舞われてしまった。やれやれ、我ながら兄弟には甘いなぁ。

#首輪をして、すぐ。

傘を差して猫を探し回ったギルベルトは、三日ほど猫が帰るのを待って、それから諦めて開けっ放しの窓を閉めた。
まるで首輪を嫌がったみたいだよねぇ。そう言った俺を見て、寂しそうに唇を噛んだギルちゃんは何も言わなかった。


>別れは呆気ない。
しっかり握っていたつもりでも、いつの間にか空を掴んでいたりする。固く繋いでいた筈の手も、するりと解けてしまう事がある。

>離さないで。
>傍にいて。
アイツの前で呑み込む言葉は苦くて、どうしようもない泣き虫な子供のような気持ちになる。もっと大人になれたら、もっと余裕を持てたら、……なんて、そんな『もしも』は意味がない。
合わせた唇からこの苦い想いがアイツに伝わらないよう腹の奥に仕舞い込んだ言葉は、いつ消化されるのかなぁ。

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