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アルブレヒト
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12 :
普
12/26-15:51
愛しの我が弟が、その小さな手で一通の手紙を運んで来た。絹の如く柔らかな金を乱さぬ程度に撫で、何処までも澄んだスカイブルーに対して口元を緩める。机上に残っている途中の書類など、後回しだ。其の身軽な身体を両手でしっかりと抱きあげ、陶磁器を思わせる肌へ口付けを。
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乳母の迎えで書斎から去った弟を見送り、何処ぞの奴が寄越した、分厚く重量感のある封筒を手に取る。差出人の名は無い。が、裏返し蝋を確認すれば一目で判断する事が出来た。椅子に深く腰掛け、机の引き出しから腕利きの銀細工職人が造り上げた、一本のペーパーナイフを取り出す。けして派手では無い彫刻細工は俺様の好みとは言い難いが、此れを送り付けた人物の趣味は大層反映させている。
そっと、流れる様にナイフを動かせば音も無く封が開いた。指を伸ばし、掴んだ洋紙を外へ。沈み行く日が部屋を照らす中、その紙はよく窺えた。少し癖のある、けれども馴染み深いインクの色。霞など全く無い、流れる様な文字の配列を一通り読む。仄かに香るは、送り主自慢の薔薇園の物だろうか。
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