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君はさよならを教えてくれない
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12/10-17:54

> 金色の龍について

あの日、我は確かに、金色の龍が「できあがる」のを見たある。煌めく小さな星々が川になって、いつしかその川は宙を舞う大きな龍へと変化した。美しいまじないを見ているようだったある。
しばらくの間、我は夢中でそれを眺めて過ごした。飽きることはなかった。鱗はひとつひとつが夢のように光り輝き、天女の羽衣のように優雅に空を泳ぐ。爪の輝きは真珠に似ていた。
そうして眺めているうちに我は気付いたある。龍にとって、この場所は檻だと。ずーっと見ていたから、ちゃんと分かったあるよ。

ああ、此処はさぞ狭かったろう。お前に新しい空を用意するあるよ。
我は窓から龍を放つ事にした。うんと悩んだ末に決めたことだった。手のひらから離れた龍は一度もこちらを振り返らず、三度の夜を越えた後ついに山並みの向こうへ消えて行ったある。
手の中にないものがあんなにも美しい。そこに昏い歓びを感じながら、我は今日も空を見上げる。金色の龍が舞った、からっぽの空を。

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