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ひとりで留守番日記
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45 :
子独
02/20-22:50
寒い夜は空気が澄んでいる。
いつもより夜が遠くまで続いてるみたいだ。
星があんなに高いよ、兄さん。
兄さんが近くにいたらいいのに。
おれがもっともっと小さいときに兄さんに読んでもらった本を見付けた。
兄さんの部屋の本棚に子どもの本はその一冊だけだった。
何回もせがんで読んでもらったのよく覚えてるよ。
おれはあのときよりちょっとは大きくなった。
今は兄さんがいなくたって自分で字だって読める。
だから昔読んでもらった本だって、兄さんがいなくたって一人で読めるんだ。
読み終わって、本を閉じて、ちゃんと元の場所に戻した。
本を閉じたらすごくさみしくなった。
だって覚えてるんだ。
兄さんが読んでくれた声。
抑揚。
腕の中の匂い。
少しかさついた手。
おやすみなさいのキスも。
全部はっきり覚えてるんだ。
兄さんのベッドでちょっとだけ泣いた。
シーツがよれてても怒らないでね、兄さん。
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