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Subterranean Rose
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10 :
英◇
03/26-15:26
幸いなことに、俺はその終末が孕んだ絶望を理解出来なかった。
理解が出来なければ、恐れることも、痛むこともない。時として無知は幸いにも繋がるのだ。その先の結末がどうであれ。
例えば物を知らない生まれたばかりの赤子が、鋭利なナイフを突き付けられて怯えるだろうか。
きらきらと光を反射する、よく磨かれた其れに真新しい玩具と等しい価値を見出して喜びこそすれ、恐怖に泣き叫ぶ由もない。
それと同じだった。どうしようもない程に。
俺は理解が出来ないのを良いことに、其れを丸きり飲み込んでしまうことにした。
味を感じてしまう前に、香りが鼻を付く前に、無理矢理に飲み込んでしまった。
喉元を過ぎれば何とやら。
そうして俺は、ただの涙一雫さえ溢さずに、終末までも見事に笑い続けたのだ。
例え、消化不全に陥った胸の奥が悲鳴を上げても、これ以上の選択など何処に在ったというのだろうか。
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