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薔薇を摘んだ野獣の噺
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06/04-00:01

さてと、何から書いていくべきか
書きたいことは山ほどあって、そのせいで逆にペンをもつ手は止まってしまう。
真っ白い紙に、無駄にインクが落とされて滲んで黒くなるばかりだ。

紙に滲んだいくつかの黒いインクの跡は、彼を摘んだ時にその棘で引っ掻けた指先、そこから滲んだ赤い血を思い出す。
雪がまだ溶けないその季節に出会って、甘い香りから逃れられなくて伸ばした。
その時に傷付けた血が、真っ白い雪と真っ白な花弁を鮮やかに染めたのを覚えている。
そういや、お伽噺にそんなお姫様がいたな。

この雪のように白い肌
血のように赤い唇
黒檀のように美しい黒髪
世界で一番美しいと言われたお姫様

まあ、だからどうしたというところだろうけど。
俺の薔薇は黒檀ではなくて、花の蜜のような金の髪をしているし、大人しく王子様を待つどころか自分から進んでやってきていた。
あんなに積極的なお姫様もそうそういないな。(ちょっとばかり世間知らずというか、無垢すぎやしないかと思うこともあるけど)

それなのに、今見てみれば……だ
いつの間にか俺がこうもぐずぐずに、盲目的に愛してしまってる。
気付いたとして、もう手遅れだ。
もう硝子ケースからは出してやれない。

だから、お前のその蜜は俺だけに

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