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異文化体験記
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6 :日◇
03/31-21:35

>恋や愛についてわからないと話す彼。
>惚れられ体質だと言い、そもそも愛される感覚もわからないと言う彼。
>求められることに幸せを感じ、存在を許されるように感じると話す彼。
>臆病者だと、失う恐怖に慄く彼。
>好きという感情とはどういうものかと問う彼。


哲学の域に入っていたと思います。
そんな感覚的なことを、まじまじと問うてくる彼の無垢なこと。
質問そのものが、他意のない、真っ白な回答用紙を差し出してくるだけのその問い掛けに彼の寂しさを見ました。

愛される感覚がわからないと言いながら、想われたいのでしょう。求められたいと願う気持ちは、彼の孤独を浮き彫りにさせていました。
過去、何度も何度も彼を愛し、心砕かれ立ち去っていく者達がいたと言います。その時彼の中にはただただ喪失感だけがあったのかもしれない。次へ次へと、関係を持ち続けながら、それなのに感情は伴っていなかったのだとしたら。


きっと彼と様々な話をしていたからだと思います。
既に早々に心砕かれ済みだった私は、嫉妬や恋慕に狂うよりもただただ愛しく、時に哀れに空しく感じながら言葉を交わしていました。自分の滑稽さを棚に上げ、惚れた弱みと称して彼の気が向くうちは不様だろうと側に置いてもらおうと。
自分にも彼にも呆れていたのです。なんて馬鹿馬鹿しい。それでも好きで。この感情を、同じ想いでなくとも、彼がいつか誰かに心の底からそう思えるようなその時が来れば良いのにと、願いました。
美談には出来ません。流石に涙が出ました。届かずとも彼の元を離れる選択肢だけはなかった。阿呆です。

謝罪と共に、彼の帰宅を待てた褒美をくれると言うので口付けを強請りました。
八つ当たりされた一件で流石に泣くやら心が完全に粉砕したやら拗れた愛情が限界突破したなど達観した私はそれはそれはもう、開き直りました。
今までどんなにバレバレであろうと口では毒を吐いていたのですが、求められたい彼ですからそう反発するとさくっと身を引くのです。離別するかと伺われると一瞬で掌くるっくるです。半べそです。開き直るしか道はなくいよいよ自分は阿呆なのだと泣けました。


そんな彼が、しみじみと問うたのは好きとはどういうことなのかということ。

問われても言葉に詰まりました。どういう?
好きは好きですよと返したかったのですが、一部感情が迷子になっている彼にその回答ではいけません。とにかく客観的に分析を始めました。

相手を求めることと願うことの両方を答えました。
話したくて、会いたくて、触れたい。
健やかにいて欲しいし、満たされて欲しいし、安心して欲しい。
幸せであって欲しい、願わくば幸せにしたい。
私が感じる好きは、こういうものに溢れていると。一番最初にくる感情は、話したい。そう思えるのが好きの入り口だろうかと。

開き直ってるのでまるで愛の告白のようでした。
それでも出来るだけ客観的に。私が彼へ抱く好意だけではなく、好きだという感情を表すならこういうものが詰まっているのだと説明しました。
たいそうな個人的意見でしたが、彼は納得したようで。

>そうか。彼はそう納得したのです。

その直後に、まるで鸚鵡返しのように彼が言ってくれた言葉に時が止まりました。

好きだと仰ってくれたのです。
私を傷付けたくはない、幸せであって欲しい。今となっては離別を考えてなどいないと。話したいから居るのだと。
胸がつかえる思いだったと。泣かれてもやもやしたなど、貴方にそんな感情あったんですかと総ツッコミを入れたくなるくらい混乱しまして。完全に思考停止しました。

本気でドクズだと思います彼からそんな言葉が出てきて、しかしこの流れで謀る方ではありません。そういう遊びはしない方です。
信じる信じないなどではなく、数分は言葉を理解できませんでした。

堪えきれず、涙腺が決壊した私に物凄く焦る彼が本当に子供のようで。

独り言のようにそうかそうかなるほどと自分の感情と答え合わせをしている姿が印象的でした。
よほどしっくりしたのか、憑き物が落ちたかのようにすっきりする彼に若干苛立ちましたが、嬉し泣きで混乱している私には恨み言の一つも返せる余地がなく、本当に時が止まっていたように思います。


好きを自覚した彼の、何よりも恐ろしかったのは誰だお前はと言わんばかりの可愛がり攻撃でした。勘弁してください耐性ゼロです心臓吐きます…。

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