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お宅妄想日記~真面目と阿呆の紙一重~
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65 :
ノソ´゚ヮ゚){日記名が秀逸なんよ!)
04/15-06:00
『今兄さんのストーカーをするのに忙しい。』
>第mbb.whocares.jp話(R18)
#今までのあらすじ
#私だけが兄さんの元に戻った。
いつからか、兄さんは他人に甘えることをしなくなった。
「ねえ、ベラ」
「どうしましたか、兄さん。」
兄さんの部屋。
暖炉の中で木がはぜる音以外は、何一つ聞こえない。
どこを探しても見つからないくらい、とても大きな家なのに、此処は静まり返った私と兄さんだけの空間。
そこに響く兄さんの…
「みんな、今頃どうしてるかなぁ…?」
いつも通りの、…いいえ、私にだけはわかる、寂しげな声。
きっと今、兄さんは、昔を思い出している。
…あぁ、なんて腹が立つ存在なんだろう。兄さんの元を去ったまま帰らないあの愚か者共め!
兄さんが恐いから?
何をほざいているんだ?
兄さんを怖くしたのはお前らだ、まだわからないのか!
多く愛を与えられずに育った兄さんは、血反吐吐きながら必死に成長して、やっとできた家族をあんなに大切にしていたのに。
あの時、あの激しい時代に、外部からの攻めがなかったと思うな!
お前らがのんきな鼻歌混じりにこの家で夕餉を作っている間でさえ、吹雪く氷点下の広い庭で兄さんは、たった一人で大勢の敵を追い返していたんだ。
それなのに、
「露さんは一緒に食事を取りたがらない。僕たちのことを嫌いなのかな…」
なんて、よく言えたな、まったくその目は使い物にならないお飾りだ。
いっそ潰れてしまえば良かったのに。
そうしたら、上手に甘えられないながらも大切にお前らの名を呼んでいた優しい兄さんの声に気付けたかもしれないのに!!
お前らが去ってから兄さんは、誰一人にも甘えることがなくなった。
いつだって、眉をその大きな体に不釣り合いな角度に下げて、少しでも怖くならないように声だって柔らかく、口は緩やかな弧を描く。
そうして、泣かずに笑っている。
だから、
だから私が兄さんを、
泣かせるのよ。
兄さんが、涙を忘れないように。
これが、私の愛し方。
……わからない?
それなら結構よ。
お前にわかって欲しいなんて毛筋程にも思わない。
あぁ、まったく不愉快だ。
きっと奴らは、自分たちがした所業さえ既に忘却の彼方だろうに、何故優しい兄さんだけがつらい記憶の上に更につらい記憶を重ねなければならないの。
#↓に続く
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64 :
ノソ´゚ヮ゚){日記名が秀逸なんよ!)
04/15-06:00
#↑の続き
「兄さん、寒いのですか…?」
「…うん、少し、ね。」
私の呼びかけで、記憶に沈んでいた意識を浮上させたのがわかった。
寒いのは体?
それとも…?
「暖めて差し上げましょうか?」
「……どうやって?」
今までになかった不穏な空気を鋭く感じ取った兄さんは、ひくりと口角を上げて床ではなく、私を見た。
「私の全身全霊で、と言いたいところですが、紅茶をいれようかと思います。」
「…そっか。それならお願いしようかな。」
安心したように兄さんが言う。
「ねぇ、ベラ。ジャムはたっぷりにしてほしいな。それから、久しぶりにベラの作ったドラニキが食べたい。…僕も手作うから焼いてくれない?…ね?良いでしょう?」
ああ、もう、兄さん、なんて愛しいの…!!
裏切りを重ねられてなお、あなたは立ち上がるのですね。
あなたに甘えて貰えるほどには私は、あなたの心の中にいるのですね。
あの日、共に居られなかったキッチンに、罪滅ぼしとして立とうと言うのですね。
「えぇ、喜んで。兄さんが望むのなら、明日も明後日も私だけは共にあります。」
愛しい愛しい兄さん。
手酷い傷を負っても、…それでも脆くて強いあなたは、過去の思い出全てを投げ出さず、背負って生きていくのですね。
思い出を忘れるすべも知らずに…。
>ノソ´゚ヮ゚){「忘れるすべを知っていれば、むしろ幸せというべきである」(副題))
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