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ノーパン健康法
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3 :
菊
04/11-01:12
溶ける程近い距離から、程好くお互いの姿形を確認できる距離まで離れ、ある日あなたは言いましたね。
『お前は恋に狂い過ぎる』
あのとき私はこう返しました。
『何を馬鹿なことを』
あれから数えきれない程の日が沈み、朝一番が鳴き、あなたはまだ付かず離れず側に居て、私は幾つもの誰かと一つになりそびれ、そして今、思うのです。
あなたは、正しかったのかもしれない。
聞けばその新緑の瞳はにんまりと笑うことでしょう。
朝のように眩しい髪を持ちながら、夜に棲むあなたとの日々は泥沼で、次こそはと追った朝の化身には逃げられ、絶望し出会った暗闇のような人は私を引き摺りこんではくれなかった。
それからも幾度も濁流に身を任せ、その都度私は一つに憧れる余り自分を見失い、溺れ、しかし結局泡となり消える事さえ叶わずに、多くを手放して一人残される。
そんな私を見る度にあなたは笑い、私もどうしようもなくて笑ってしまう。
今、私は幾度となく繰り返したその時と同じように、誰かの裾を掴んでいる。
しかし、もういい加減溶けることはできないだろうと予感しています。
それがわかる程には、どうにか進化の過程を歩むことができました。
私が掴んだ裾の先には、夜に輝く髪をした、夕暮れ時の瞳があります。
この人が朝に棲むのか夜に棲むのか、私にはまだ判断がつきませんし、この指がいつまで裾を手繰れるのかはもとより判りません。
しかしもう、いいのです。
私は恋に狂う。
狂って、無くして、落として、泣いて。
また戻ってくるかもしれません。
それでもまた踏み外しに向かうのです。
そんな私を見てあなたは、にんまりと笑えば良いでしょう。
そして私も、笑えば良のです。
新緑の三日月と一緒に。
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