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さよならのワルツ
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10 :
Arthur Kirkland
10/08-01:37
知る事と受け入れる事は別物だ。
目にしたから、耳にしたからと言って、それを全て許容する必要はない。
そう言う事もあるもんだと知ってやるだけでも変わる。拒否反応ばかり起こしていたってどこかが痛むだけだからな。
明らかに他人同士で、似通った所なんて一つも持ち合わせちゃいないのに、それでも何処か落ち着くのはつまりそう言う事なんだろうと俺は思う訳だ。
例えば俺とお前が居て、大雑把に分類すれば同じ人の形をしている同じ生き物だ。それ以外の記号を取り付ける事は簡単だが、わざわざ付属させる必要はない。そんなもんは数十年前に置いて来た。
形作る環境や、慈しむ大地や、仰ぐ空の色。一息つける香りも好きな味も違っても良い。
結局俺達は模造品でしかなくて、その事実が堪らなく真実なんだろう。人の形をした、ヒト。本物になれないまま息をする事を覚え、色褪せた記憶が邪魔をする。
お前が肯定しなくても俺は生きて行けるし、俺が笑っていてもお前は泣いているかもしれない。
たった一つの約束を大事に握り締めたお前を、俺は置いて駆ける。振り返らない。
地図のない海路はもうないんだ。甲板で受ける風は生温いし、砲撃の音も聞こえない。
客船と化した緩やかな時代に、白い花を添えて。水面に叩き付ける歌が潮風で痛む。
崩れ落ちた理想郷でも、お前は帰って来るんだろう?
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