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さよならのワルツ
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134 :
Arthur
07/04-05:12
何でもない日。
ただ俺の具合が悪くてただただ騒がしいだけの、何でもない日だ。
そう言い聞かせて来て、どれだけの時間が過ぎたんだろう。
愛している、そう伝えるだけで良いんだと髭やマシューは笑うが、そう簡単にいくもんじゃねぇんだよ。
もう意地のひとつだな、と思わなくもないが。今年も招待状の文字を指先で辿りながら、月明かりの下でシーツの海に沈んでいく。
あぁ、それでも。……それでもこの喉は赤いインクを零す事は少なくなってしまったし、真夜中にナイトウェアのままハーブティーを淹れる余裕まで出来てしまった。
それを懺悔する身体の軽さはない。己のテリトリーを出たらどうなるかも分からない。妖精さんの囁きが聞こえる範囲だからだ、なんて。
言い訳にしかならないんだろう。
それでもその先に在るものを手探りで手繰り寄せられる程、正しくはいられなかった。
今日もきっと、小さなあの子の夢を見る。
淡く笑って抱き上げて、ひとつの家の扉をくぐる夢。俺が知ってしまった暖かい欠片を巡るだけの、パウダーシュガーをふりかけた刹那の記憶。
あぁ、もう少しだけ。爪先がシーツを泳ぐ事を許していてくれないか。
いつか、きっと。
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