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お前はそこで笑っていて。
 ┗32

32 :子独
07/25-04:12

>(悩みは尽きないのが常で、)




悩みというものは生きている以上付き物だという詩をどこかで昔見た気がする。情けない。その悩みが自分の不甲斐なさであれば尚更。

兄の背中に護られて生きてきた俺はずいぶんと臆病だと思う。続々と周りが剣を取り始めている。俺ももうずいぶん身体が大きくなった。黒衣を纏ってただ一つのものを追いかけ回していたときが懐かしい。…そうだ、あの頃のあいつを追いかけまわしながら見た風景は今思い返せば綺麗なものだった気がする。




寝場所に転がって何度も何度も寝がえりをうってみる。まるでもがくように。嬉しさなんかじゃない。もがくといったって、本当に逃げられるとでも思っているのか。起き上って気だるい身体に耐えられなくなってまた寝ころぶ。


何時だろう。暗い部屋で時計を探すも、その丸い形は辛うじて分かるが二本の針がどこを指しているかはわからない。闇と同化してしまっている。俺の視界もそろそろあの針のようにならないと、明日は早く起こされるだろう。







そうだ、今日は歩く夢が見たい。
飛ぶ夢なんて不安定なものは見たくない。ただその地をしっかり踏んで歩いている夢をみたい。きっと俺がここまで歩きだすことを恐れるのは、自信がないからだ。それと無知。そして性格もおまけにつけてやる。前に頑張って歩いて見たらそこは良く見たら泥沼だった。だからきっと怖いんだ。

最近俺のなかの悪い奴が大きくなっている気がする。そいつは怠慢で強欲で我儘で自分勝手で、見た目は俺と同じ形をしてるんだ。隙あらば俺の手綱を奪おうとする。…そういってる俺が良い奴なのかといえば、違う。俺は真ん中なんだ。よくあるだろ?天使と悪魔の例え。でも天使や悪魔に話しかけられる主人公はどうやって描かれてる?…中間だろう。






でもずっと主人公が中間だと物語は続かない。だから結局天使か悪魔に転ぶのに、俺はまだ中間のまま。でも最近悪魔がやけにうるさい。俺が知識を得るために本を読もうとするとやめて遊んでしまえという。俺が掃除をしようとしてもそうだ。そして俺が剣術を練習しようとすれば「まだあとでいいだろう」となだめてくる。…なんなんだおまえは。




嫌な奴だ。俺は嫌いだ。
まだこうやってきっぱりと拒絶できるだけマシだろうと思う。本当に怖いのは「あぁ、そうか」と素直にあいつの言うことに頷いてしまうこと。俺はそんな風になったりしない。


…もう、寝よう。うとうと。瞼がおもくなってきた。
明日は剣を握ろう。兄さんに縋って無理やりでも。
俺の悪魔が邪魔をしないように。






>(歩く夢をみられますように、)

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