手繰る糸過去に縋りたくなる衝動ってのは不意なモンだ。お前は変わらずあの頃の侭、記憶は軈て薄れ行く。都合の良い部分だけを残して。
俺も随分と変わったものだと耽る。今の俺を知ったらお前なら何の言葉を寄越して来るだろうか。全く想像が付かないと漏らすお前は揶揄するように俺を横目で見て、関を切ったように話す俺へ頻りに笑みを零す。うっかり其の顔に見惚れそうになっちまったのは俺が弱っている証か。全く我ながら莫迦な事を。俺とお前に失うものが何も無くなったその時は、あの頃は一度として叶う事の無かった夢を。過去に惚れた女と今更身体を繋げるなんてな、お笑い種だ。