スレ一覧
┗317.ポートレイト・レター(15-19/24)
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15 :
リヴァイ
2014/09/15(月) 22:21
唯燃やして片付けるにしては、その数は余りに膨大だった。パンドラの箱は、開くと同時に災厄や不幸が飛び出して、最後に希望だけが残ったんだろう。此奴は全くの逆だ。希望も期待も幸福も、封を開くと同時に飛んで行っちまって、最後には空虚しか残らない。その事を、俺は知っていた。詰め込まれた無機質な文字達、冷たいインク。何も、何一つとして。燃やすだけで終いに出来る程、ちっぽけじゃなかった。
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何喰わぬ顔で笑う女を眺める。なあ。お前も、変わったのか。俺と同様に、お前自身でさえも、変化には勝てなかったのか。
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16 :
リヴァイ
2014/09/15(月) 22:32
幾分遠い冬の日。凍む空。吐き出した白い息。悴んだ指先。首に巻き付けていた黒いマフラー。いつか消えそうだった存在が、確かな実感を伴い個として其処に在った。静かに微笑む。緩やかな口許。至極珍しい事に、その声は穏やかだった。甘い否定と冷えた肯定。いつだって、女は正しかった。あの時迄は。
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記憶に新しい初夏の日。澄んだ空。暑さが絡みつき始めた首筋。惜しげも無く晒された白さ。数年を経て、初めて見る表情。明確な疲れを帯びたその眼差しは、弱々しく頼りない。常に纏う気怠い余裕を取り払って、小さく呟いた馴染む声。嗚呼、分かった。俺が助けてやる。応えない瞳。けれど震えたその睫毛に、女も人間なのだと知った。
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17 :
リヴァイ
2014/09/29(月) 20:23
淡々と沁み入る暴落音。そうか任せろと唯頷き、無言で刃を握り締めては空を駆けた先日。それは打ち震える程の歓喜だった。次いで届いた手紙には見慣れぬ文字の羅列。労る言葉に感情が灯らずとも、その物珍しさに差出人の名前を再確認した。見知った名前、馴染む字面。万年筆で刻まれる黒は滲んでいた。内地から此処へ届くまで、雨にでも濡れたのか。今ではすっかり乾いたその紙面をなぞり、先日抱いた歓喜を思い出す。嗚呼、これで。これだけで。充分だ。
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18 :
リヴァイ
2014/09/29(月) 21:30
一行にも満たない言葉を綴っては破り捨てる。送れない手紙が積み重なる。部下の呆れた眼差しを受けながら、それでも俺はこれ以上筆を動かせなかった。
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19 :
リヴァイ
2014/10/15(水) 12:28
これだけで充分だと実感したのは、先日の話だ。所詮は俺もクソみてえな人間だったと云う、唯それだけの話なんだろう。欲に塗れたクソ野郎だ、己の望む侭行動する愚かさを身に染みて知った。女は呆れたように笑って、それが別れの合図だと言葉が無くとも悟れた。積み重なった手紙の枚数を数える。今後も増える事はある筈だ。内地へ馬を走らせる事が無くなる、そんなちっぽけでくだらねえ、けれど俺にとっては意味のある、小さな変化。女も生身の人間だった。認めよう。欲しかった。
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