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┗347.飛翔のヴィクトリア

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1 :Petra Ral
2014/09/13(土) 14:57




─ どうせ女神と呼ばれるなら、 ─

掲げる闘志の旗を、 抱えた想いに いつかの自由を
欲しかったものは、勝利よりも確かなあなたとの未来でした


:

no.347
( here dear bkm )




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15 :Ymir
2014/09/19(金) 21:35




▼ Page:015
大事なものは何時だってひとつで、私にはクリスタが居れば充分だった。
──なんて言えば、聞こえはいいだろ? けど、それも全部が全部自分可愛さ故だ。
私が自分を保つ為に、生きて、そして目的を果たす為にあいつが必要だった、ってだけのこと。

それなのに、あんたがそうやってやさしく掌を伸ばしたから。優しさに飢えてた私はするりとその腕に甘えちまったんだ。
本当、ださい話だろ? この薄汚れた身体を抱いてくれるなら人間だって、巨人だって何だって良かった。
っていっても、流石に巨人同士が抱き合うなんて地獄絵図は勘弁してくれ。
女としてのしあわせなんてどうだって良い。性別どうのの前に、自分が人間か巨人か───それすらわからねぇんだから。

なあ、ベルトルさん。 あんたも物好きだよ。
私みたいなそばかすだらけの、ぱさついた髪の女の何処が良いんだ?
クリスタみたいに女らしい奴だって、ブロンドの髪のアニだって。ミカサの東洋の妖しさに惹かれたりはしなかったのかね。

全くもう、ほんとうに。笑いが止まらなくてさ。
ああ、 こうして私に触れるのも随分久しぶりじゃないか。 あんたも男だ。溜まってたんだろ?
女々しい優男な風に見えて、私に触れたその腕は確かに男なんだな。面白ぇ、 ……はっ、褒めてるんだよ、馬鹿。


( 腹が減った、眠い、ヤりたい。 そんな当たり前の、どうしようもない人間の欲を思い出せる。
        私は、あんたの前でだけ”にんげん”で居れるみたいだ。 あんたも、そうだと良い。
 )





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16 :Petra Ral
2014/09/20(土) 09:15




▼ Page:016
月はもう高く、それでいても尚 不眠の餓狼は眠ろうとしない。

戦の興奮か、仲間の死への憂いか。私への気遣いか、
中々眠ろうとしない兵長を横目に見遣りながら一人、白いシーツの上で泳ぐ。


兵長、今日はとても良いお天気でしたね。
昼間にはシーツを外に干して、肌寒くなってきたので薄い毛布もだしたんです。今日は暖かくして眠りましょう─



漸く説得に成功した頃、重い足取りで椅子を引いて、石鹸の香る白い海に身を投げ出す姿にすこしの安堵。
本当は兵長が眠るまでは私も起きていよう、って頑張ってみたんだけど…夜に弱い私は真っ先に眠りにおちる。


不眠の餓狼と、過眠のうさぎが見る夢。 それはベッドが隣り合わせだったとしても、けして同じでは、ないんだろうな。






不意に目を覚ました午前三時のこと。
あなたの寝顔を見つけてそっと海を抜け出して陸へと這い、傍らへと膝をつく。

ふふ、戦場では鎌を振る死神の兵長も──寝顔はこんなにも、やさしい。

冷たく滑らかなその頬に触れるだけの口付けを。 それは、明日の勝利を願う女神からのささやかなおまじない。
──ねえ、兵長。私にとっては人類の栄光ではなく、あなたが生きて帰ることが。 幾度の勝利、なんですよ。


おやすみなさい。 小さな餓狼、 巨大を狩る、死神さん。


( 死こそが敗北、そして。生こそが── だって、そうでしょう。兵長。
         わたしはわたしの、家族の、たいせつな人の為に、この左胸を捧げたんですから。なんて、女神失格かな。
 )





それでも平穏に、壁のなかで生きることを望まない私たちは愚か、なんでしょうね。
憎しみと、挑戦。それから、復讐と、 それだけで生き抜くことは出来ないのだと悟ったのは、幾つの死を見過ごした時からだったかな。



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17 :Rico Brzenska
2014/09/20(土) 20:13




▼ Page:017

>20:15
作戦開始だ。イェーガー。
私たちに許された時間は丁度一時間。 人類の威厳をかけた新たな一幕を此処に。
先ずは大物が来る前に、訛った身体を慣らしにでもいくか。

>20:50
目的数討伐完了。これより超大型巨人討伐作戦に入る。
各自位置につき、目標を誘導せよ。 誘導地に入り次第迎撃の態勢に入れ。

>21:03
「 多くの、数え切れない犠牲がありました……。 」

何処かで聞き覚えのある女神の一言で多くの兵の涙を誘う。死んだ兵の、冥福を祈る。
迎撃の態勢をとり、射撃の態勢に迄はいったものの作戦は失敗に終わった。
長きに渡る巨人との戦が、この一瞬で終える筈がなかったのだ。 ──否、けして私たちは此処で踏み止まることは、ないだろう。

我々は着実に、勝利への道を歩んでいる。 後退することなく、前進しているんだ。


( そう、言い聞かせて居る。願わずには居られないのかという部下の問いに、私は首を振ることも 頷くことも出来なかった。 )





勝敗を決めたのは、任務遂行中に起きた一瞬の出来事。
走る路地の暗闇の中、横たわる屍を踏み込んだ。 足の感触にふと我にかえり、時が止まる。
それは間違いなく私の” 部下だったもの ”で。 私はその時、兵として、上官としての使命を忘れ、恐怖に震えることしか出来なかった。

見上げた先には10m級と4m級、13m級の獲物が三体。
人間の腐臭と、生きた餌の臭いに釣られて獲物は轟音を響かせて此方へやって来る。

──どちらが獲物かだなんて、わかっていたさ。 イェーガー。わかっている。
お前があの時、私を助けに来なければ。死体を踏み台にしてでも巨人のうなじに刃を走らせれば、こんな無様な結末にはならなかったんだろう、

私の一瞬の判断の遅れが、また多くの犠牲を生んだ。



すまなかった、───今度は、今度こそは、 かならず。


( 人類の威厳を取り戻す為ならば、人ならざるものにならなくてはいけない時だってある。そうだろう、リコ。 )



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18 :Annie Leonhart
2014/09/26(金) 15:55




▼ Page:018
じゃあ、聞くけど。あんたは本当に『人類の為だけに』戦っているの?
その『人類』っていうのは一体何方様のことなんだろうね。

そのへんのおっさんが、子供が、娼婦が野垂れ死にそうになってたとして、あんたは手元にあるパンの欠片を全部渡せるっていうの。
着ている衣服を、その革財布のなかにある僅かな金を、自分の生命を。

可笑しな話だよ。すぐ傍で這い蹲る身近な死も厭わない人間が人類の為を望むなんて。


結局大事なのは自分と、自分が大事にしているものの、勝利 そして未来だ。 なあ、あんたもそうなんだろ?
そんな人間らしい望みを口にするだけで牢獄行きになるなんて馬鹿馬鹿しいにも程がある。

私は言葉を失った家畜なんて、獲物を喰らうだけの物言わぬ巨人とそう大差はないように思うけどね。
まあ、食う側か、食われる側か。 それが一番大事なことなんだけどさ。どっちも気分が良いもんじゃない。




私は、人間で在りたい。 いつだって、人間になりたかった。




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