甘く温く匂う血の
あれからかなり経ったのに、なんか実感が無い。
証拠不充分だ。
ずっと眠ってたのか?
木板の隙間に、血が残ってる。
『チッ、汚ねぇな・・・』兵長の反応が目に浮かぶ。
焼きが回った、って言うのかな・・・それか病気だ。
何にしたって、兵長からの反感は好ましくない。
嫌だ。
それだけは、どうしても。掃除しよう。
きっと、たくさん残ってるから、早く拭いて―――・・・
?
なんでオレ・・・、生きてるんだ?腐ってないのに、だからこそ、この部屋にはもう
最悪な臭気が満ちている。吐きそうだ、何で今まで気にならなかったんだろう、オレ。
噎せ返る臭気に不快感・・・不快感が
・・・、あ。
・・・気持ち悪い・・・血の、臭い・・・?
なんて甘い臭い、知っている。
この臭いを知っている。
何だ・・・?
・・・・・・母さん?
母 さ ん の ・・・「・・・ッ」活き血はなんとも言えない甘い臭いで、だけど美味しそうな匂いはしない。
錆の臭いはしない。
鉄分を擦り合わせれば、それらは壊れて死んで、急に酸化させられた臭いに、なる。
酸素と結び付く、酸化した鉄は錆の臭い。
火と同じだ。
酸素を糧に火は燃える。
だけどこの、鉄分の臭いが負けている空間では、
言葉通り、血生臭い。
甘くて臭い・・・
いつか・・・・・
いつかの・・・母さんの・・・
あの時のと同じ臭いだ。
咳き込む。
気持ち悪くて、息するの、つらい。
換気もできないし・・・
葬儀用の線香でも焚かなきゃ
どうにもならない・・・
・・・葬儀だって・・・?
その、線香を・・・?
「自分で、焚くって―――・・・?」どういうことなんだよ・・・笑えない。
冗談・・・
>コンコンッ・・・!!!
#ドアをノックする音がしたドアの向こうの気配。
何だか違和感がある、何だか、違う。
兵長だよな?
・・・だよな・・・?
「・・・・あ・・・?」「エレン、入るぞ。」「兵・・・長・・・イ・・・オレ・・・」いやだ、と
言えていたら良かったのに。