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琥珀の多幸感は然れど耽溺の音に蕩け…
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我/妻/善/逸(鬼/滅/の/刃)
2024/07/11(木) 10:23
> 幼。
あぁ、まただ。 またへんな音がする。
いやだ、…聞きたくないのに。
奉公人として働く、その側で聞こえるのは、…───。
正確には今、居る主人…旦那さまの屋敷の裏手の更に向こう。
布の擦れる音、荒い息遣い、下劣な声。
なのに…笑い声。
# 何これ?
いやだ、気持ちが悪い。
どれだけ強く耳を塞いでも音を拾ってしまう、この耳は。
聞こえる、聞こえちゃう…──やだよ。
俺はこんな事なんて知りたくなかったのに。
えっ?
なん…ですか、旦那さま。 その目は。 その音は。
なんでそんな音を立てているんですか?
俺は唯の奉公人ですよ?
まさか……違いますよね?
やめてください、そんな目で見るのは。
# 同じだ、向こうから聞こえる音と。
やめてください、そんな音を立てて俺に近付かないで!
# 俺は奉公人だから。
# 俺は" 奉公 "人だから?
そんな、澱み歪み切った様な音で俺に近付かないで!!
# ───…っ、はぁ、はぁ…、…。
腕を掴まれた跡が痛い。
あの場所に水瓶があって良かった。
柄杓で思い切り旦那さまの顔に水を打っ掛けた。
その儘、手の柄杓も顔へ思い切り投げ付けた。
俺を笑って見つめて来た、あの顔に。
走って、走って…とにかく走って逃げた。
脚だけは昔から速かったから、…それが幸いだった。
……。
あぁ、この場所で響く音には碌なモノが無い。
その所為で俺は…
俺は…
音が怖い。 あの音が。
渦巻く程に欲望に満ちた、あの音が。
そうだよな…俺は所詮は棄て子。
何処の誰に棄てられたかも解らない。
名前も、家も、何も無い。
そんな俺を真面に愛してくれる人なんて居ない。
# もし、いつか俺が心から愛したいと思える人が現れても…
# 身分が違う。 存在価値が違う。
# だから愛されようなんて期待しない。
# 期待…しない。
# 期待…───なんて、しない。
ほら、やっぱり。
愛されたくて頑張っても、振り向いてくれない。
それどころか触れさせてもくれない。
気が付けば利用されて、それで終わり。
其処に愛なんて何も無い。
騙されてると、この耳は確かに解っているのに。
何処かで期待なんかするからだ。
俺が、俺なんかが愛される訳が無いじゃん。
もううんざりだよ、裏切られるのは。
人を騙す音も。 人を疑うこの耳も。
───…次で最後にしよう。
今度、俺が愛したいと思ったら俺から裏切ろう。
どうせ遊びなんだ。 相手だって。
だったら一度切りの火遊びだって言えばいい。
そうすれば誰も傷付かない。
# 俺だってこんな事、知らない儘で居られたなら…
# 媾おうなんて、お前に言わなかったのに。
# 何も知らない純粋なお前に、穢れた欲望なんて自覚させずに済んだのに。
# ごめんな。
# ごめんな、炭/治/郎。
結局、俺も彼奴等と同じモノになっていくんだろうな。
# それでもお前が欲しかったんだ。
# お前の事が如何しても。
嗚呼…そう願ってしまった俺は最低だ。
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