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┗付箋と栞だらけのネタ帳(231-234/234)
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234 :
フギト(うたわれ/ロスフラ)
2022/06/11(土) 21:12
(何もかもが捏造且つ、喪失ネタ。注意)
十全とは言えなかった。
仕えるべき國を追われ、守るべき者も守れず、共に在るべき家族とも離れた。
忘恩の徒、不義の臣。そう、己の名すら打ち捨てて。
何もかもを失い、霧の中を彷徨い辿り着いた果て。
何の因果かそこで皇として一國を治め、その地に生きる民を見守り、後を継ぐに相応しい孫娘も得た。
両親を亡くしたばかりで皇を継いだ孫娘。長らく國内に巣喰っていた膿は出したが、まだ若い身の上に気掛かりが全く無いかと言えば嘘になる。だが、一國の皇として上に立ち、市井に生きる民達に寄り添う志は既に一人前のそれであった。まだまだ足りぬ所もあるだろうが、力になってくれるであろう者達も見つけられた。
全てを失ったと思っていた。それでも後に残すものがあったと、それが決して悪いものではないのだと思えたが故に。
流浪であったこの身が幾年も経て老いさらばえ、避けられぬ果てに行き着こうとも。
存外悪いものではなかったと、これも定めなのであろうと、思い残す事は何も無いと穏やかな心地でそれを受け入れた筈だった。
――そうして、目の前に。
>「……まさか、自分がお前を出迎える側になるとはなぁ」
見覚えの無い白い仮面の奥、陽だまりに似た瞳が己を見つめて微笑う。
何処からか吹いて来る風が、眼前の白い衣を揺らす。柔らかく舞う花弁と穏やかな空気は、それはまるで。
ああ、と口唇から何とも付かぬ息が零れ落ちる。この髪が霜を置く前。遠い、遙か彼方の懐かしい記憶の欠片。
己が迎えた定めを受け入れた筈だった。先は後に生きて行く者達に託した筈だった。
何もかもを果たせぬままだった為に。全てを失ったと思っていたから、己の名すら葬り去ったのに。
故に、叶うべくもないであろうと思っていたのに。
>「 」
あどけない笑顔で、疾うに捨て去って久しい己の名を呼ぶ。
ただそれだけで、この胸の内が温かくなる。すっかり枯れ老いた筈の奥懐に、花が咲いた。
欠けさせてなるものかと足掻いて、けれども叶わず取り零してばかりだった手を伸ばす。
呼び返すべき名は置き去りに、ただ希うまま。そしてその全てを受け入れるかのように、『彼』は己の手を取ったのだった。
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233 :
敦田 ミヤズ(真Ⅴ)
2022/01/19(水) 21:49
よく見る夢がある。
異国の王子様が迎えに来る夢。
その王子様は緑の肌をして、月の形をした舟に乗っていた。
まるで子供の頃に見た、アニメの歌みたい。夢だからかもしれないけど、この世界の事じゃないような心地がして。まるで現実じゃない、ううん、寧ろこっちの方が現実であるかのような。
王子様は私へ向けて、手を差し出す。
あのアニメのように、何処か遠くに連れて行ってくれるのかな。そう思って伸ばした指先を通して、赤々としたものが流れ込んで来る。
鮮やかに赤い、まるで血のようで、けれども血じゃない。王子様ーー彼の指先から、私の指先へ、そして身体全体へ。糸のように伸びたそれは血のように私の中に吸い込まれると、溶け込んで巡り、熱く脈打つ。
とても不思議な感覚。本当に、夢じゃないみたいで。
でもどうしてだろう。
月に似たとても優しい瞳で笑う彼に、私はどうして、と思う。
それは彼が誰なのかという事か、この不思議な行為か、それとも何故だか感じる心地良さの為か。
分からない。分からなくて問うけれど、彼から答えを聞く前に夢から覚めてしまう。
貴方は誰?
夢から覚めてなお、心に、ううん、魂に残る想いにそう呟く。
だけど当然のように答えなんてなくて、ただ指先に仄かな温もりだけが残っていた。
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232 :
業斗童子(悪魔召喚師)
2021/07/29(木) 18:54
それは奇妙な依頼だった。
奇ッ怪な依頼は常だった。
だがある時、持ち掛けられたのは、奇妙、否、正しくはどう形容すべきだっただろうか。奇異、違う、異質、か。
疑念が沸かぬ訳ではない。依頼の体をして、実際は此方を陥れるようなものであった事もある。
しかし捨て置く訳にもいかぬのは、この帝都を守る使命が故。たとえその内容に疑義があれども、その原因が不明確であろうとも、持ち掛けられた依頼主が不詳であろうとも。
そう、あの存在の思惑が何であったとしても、だ。
転じてこの帝都の害と成すのならば、それこそこの名跡が負う責務を果たすのみ。その為に、今の14代目まで連綿と葛葉の名は継がれて来たのだから。
故に、眼前に祓うべきものと見定めたのならば。ヤタガラスのサマナーの実力、見せつけてやるといい。
その覚悟も術も、既に教えて来た筈だ。そうだろう、ライドウ?
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231 :
新田 勇(真Ⅲ)
2021/02/12(金) 20:06
みんなどうでもいい。オレの事なんてどうでもいいと思っている、それと同じように。
オレもみんなどうでもいい。全部、どうでもいい事だったのだろう。
オマエだってそうだったんだろう。オレの事なんて、そしてみんなの事なんてどうでも良かったんだろう?
だってそうだもんな、オマエはいつだってそうだったよ。オレは知ってるんだ。
いつだって。祐子先生がオマエには何か優しいのだって、あの高慢ちきな千晶と長い付き合いらしいのだって。オレが祐子先生のお見舞いに行こうって言った時だって、オレの言う事なんて。オマエは何の事も無げに、どうでもいいみたいに。
どうでもいいから、何を言ったって、何をしたって平気なんだ。オマエにはどうでもいいんだろう? なら、オレだってどうでもいいようにしたっていいじゃないか。
祐子先生の様子を探して欲しいってわざと居る筈も無いだろう地下に行かせた事も、悪魔がうじゃうじゃ居る中で祐子先生を助けて欲しいって頼んだ事も、アマラ神殿で他の悪魔達を始末して来いって言った時も。嫌なら断りゃ良かったのに、そうじゃないのはどうでもいいからなんだ。そうだよな、そうじゃなかったらアマラ経絡にも来ない。会いたい、だなんて返した所で、それでどうしてくれるっていうんだ。オマエ相手に何を零したって、オマエには関係無い事だからどうせ関係無いとか思うんだ。オレがあれこれ言ったって何とも思わないだろうオマエなんだ、オマエはオレに何もしてくれやしないだろう? オレの事なんてどうでもいいんだからさ、どうでもいいと思うから、オレの事なんて分かりやしない。
だから、オレもオマエの事がどうでもいい。どうでもいいオマエの事なんて分からない。分かろうとも思わない。分かりたくなんてない、どんな事を思っていたのかなんて。
オレはオレの事だけで充分だ。オマエだってどうでもいいと思うのなら、そうしたらいいじゃないか。オマエとオレは違うだろう? そんな妙な身体になって、けれど、それもどうでもいいくらいに、何の事でもないようにどんな悪魔も倒しているようだから。オマエなら、何があったって平気なんだろうさ。
――なぁ、だからオレの事なんてどうでもいい。そう思ったままで居りゃいいんだよ。
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