「怒ったあたしの顔も可愛いんですか?」
可愛い。わざわざ問われることが理解不能だ。目映い笑顔も、酒宴の席で上機嫌に笑い転げるさまも、不義の輩や不平を働くものに向ける憤りも、……戦のあとの、哀しげな眼差しも。お前を構成する感情の総てがいとおしい。それらが素直に表出する顏を、余が愛でずにいられるはずがないだろう。
「物好き」
…遺憾である。余の嗜好の是非を問うだけに飽き足らず、余の寵愛する美狐に対して何たる言い草か。
罰として今宵一晩中その尾を…いや、その身全てを余に差し出せ。お前は余の掌中の珠であるのだと、嫌と云うほど思い知らせてやろう。
……。白珠、お前は余が注ぐ情愛を「嫌」とは言わぬだろう、これでは終わりがなくなる…ならば、翌朝の陽が昇り、空がお前の眸の色に染まるまでだ。
…ねえ、丹楓。それわざとですか?いえ、きっとあなたのことですから自然と溢れた言葉でしょうけど。そういうの巷では“殺し文句”というそうですよ。まるで何処ぞの星の、三千世界のなんとやらですね。あたしのことをよくご存知のようで。また手を繋いでくださいね、あの晩のように。Dan Feng