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スレ一覧
130.BLUE LAGOON
 ┗31

31 :弦月
2025/04/08(火) 12:18

かなり間が空いちゃったけど、>>30の続きだよ。

体も動かないし、誰にも連絡できないしで、とにかく歌うことしか娯楽が無かった。そんな時に誰かが急いで入ってくる気配があって、まあ医師やお見舞いに来る人も居るから気にも留めてなかったんだけど、それが突然、俺の名前を呼んだんだ。見れば翠縹の彼がそこに立ってて、俺は「え、」って声を上げた。彼は寄ってくるなり崩れ落ちて泣き始めて、俺は動けないからどうしてやることもできなくて困って、「……リンクパール壊れちゃった!」って連絡できなかった言い訳をした。きっと、すごく心配してくれてたんだろうな。優しいもんね。俺の手を握って「生きててよかった」って言った翠縹の彼はまだ泣いてた。泣き虫だね。

彼はまめにお見舞いに来てくれた。いつも俺が欲しそうな物をバッグにパンパンに詰めて持ってくる。「何か他に欲しい物はあるか?」って聞かれたから、「酒」って言ったら「それはだめ」と却下された。でも、こっそりリキュールが入ったチョコを差し入れしてくれた。嬉しい。

前に彼が故郷に帰れなくて彷徨ってた時のこととか、今回のこととか……色々思うことがあって、野戦病院を退院したころ、俺は「エタバンする?」って持ちかけた。ぽかんとした顔してた。誰かを懐に入れたくないって散々言う俺が、そんなこと言い出すなんて夢にも思わなかったんだろう。
「そうすれば、何かあってもすぐ駆け付けられるしさ。君がもう指輪は要らないなって思ったときに捨てても俺は別に文句言わないし」ってやけに早口で言って、ふらっと寄った花屋で薔薇を包んでもらって、彼に渡した。
「俺は、捨てないから」
って言ったら、彼はそれはもうぼろぼろ泣いて、
「死んでも捨てない」
って言ってた。やっぱり泣き虫だね、__。


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WHOCARES.JP
30 :弦月
2025/02/13(木) 14:16

だいぶ間が空いちゃった、折角だし少し前にあったことを話すね。

とにかくその日はすっごく風が強くて……それに運が悪かったし、あと油断していたんだと思う。ギラバニアで受けた依頼、それ自体はなんてことない簡単な治安維持目的の討伐だった。ただ、そこにモブが現れたんだ。
モブの討伐自体は何度かしたことがあるけど、そうともなれば相応の準備をしたり癒やし手を増やしたりとかしてたしさ。そういう手間も心構えも全く足りてなかった。
流石にそうとなれば討伐より退却を優先すべきと思ったし、逃げるための足止めをしようと後手に追い込まれながらも攻撃をしてた。でも最初に言った通りその日は風が強かったわけ。風に煽られた矢は思いの外狙い通りに当たらなくて、焦って後退してた俺は完全に不注意で崖から足を踏み外した。あっと思った時にはもう遅い、俺の体は受け身も取れず地面へと落下する。幸運だったのは崖はそれほど高くなかったことと、モブが俺を追ってこなかったこと。嫌な音と共に俺の意識はそこで途絶えた。

起きたらラールガーズリーチの野戦病院に寝かされてた。誰かが見つけて運び入れてくれたのかな。丸一日くらい経過してて、全身痛いし骨は随所折れてるし、挙げ句リンクパールは壊れてた。……別に、俺と彼は名前の付いた関係じゃないからさ、連絡する義理も義務も……無いんだけど。きっとすごく心配するだろうな、とその時思ったよ。
足もまだまともに動かないせいでしばらく寝たきりの生活だった。周囲には重傷患者も多いから辛気臭いし、退屈だし、話し相手も居ないし、娯楽も無い。俺にできることといえば、本を読むか、小さな声で歌うことだけだった。あれは何の歌だったんだっけ、たしか……グリダニアかそこらで聴いた歌だったと思うんだけど。