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┗130.BLUE LAGOON(21-25/29)

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25 :翠縹
2024/10/08(火) 17:00

先日、ラザハンとトライヨラで買った土産を持って故郷を訪れてみた。

手紙を書いたらどうか、と弦月の彼に言われたが何を書いたらいいかわからなくて時間だけが過ぎてしまっていたし、決して家族ことが嫌いになった訳でも無く、故郷を出てからもずっと家族のことは気になっていたから。

受け取ってもらえるかは分からなかったが、父と兄にはラザハンで見かけた彫刻が綺麗で使い勝手の良さそうなナイフを、母にはトライヨラのアルパカの毛で編まれた色鮮やかで暖かそうな膝掛けを選んだ。




結論から言えば、受け取ってもらうどころか、故郷に帰ることすらできなかった。

外部との関わりを絶っている故郷の村は周辺の森に人祓いの類いの幻術が掛けられていて、外部の人が踏み入れると方向が分からなくなって迷子になり村に近付けないようになっている。

狩りで駆け周り熟知していた故郷の森で、生まれて初めて迷子になった。

どれだけ歩いても村の入り口に辿り着けなくて、それでも三日三晩さ迷い続けたが自分の目に映る森は自分の知っている故郷の森とはまるで異なっていた。

ああ、自分はもう外部の人間なのか。
反対を押し切り故郷を出て冒険者になることを自分が選んだ癖に今更になってそれを理解して、勝手に傷付いたことがあまりにも滑稽で少し笑えてきてしまった。「二度と戻るな」と、そう父に言われていたのにな。

鬱蒼とした森に気分を落としながらまた出口を探してさ迷っていた時、ふと見覚えのあるクヌギの木が目に入った。クヌギの木なんてどこにでも生えているが木のうろの位置と形が自分の記憶しているもの全く同じだったし、近付いてよくよく木を見てみればその幹の下の方に自分の名前が下手くそな文字が刻まれていた。9歳頃だっただろうか。危ないからと持たせて貰えなかったナイフを漸く持たせて貰えるようになって、嬉しくて仕方がなかった頃にこっそりと彫った記憶がある。大きなどんぐりの実を沢山つける木でお気に入りだった。

この木のおかげで自分のいる位置と故郷の方角がわかったが、もう一度訪れてみることはしなかった。きっとまた村に辿り着くことができず、あの森をさ迷い歩くことになるだろうから。

渡すつもりだった物をクヌギの木の根元に置いて、木のうろの中に子供頃に貰ったナイフを置いてきた。



「帰るか」と思わず呟いてしまった時、情けなくも目頭が熱くなるのを感じた。故郷を捨てたのは自分なのにな。

本当に、情けない話だ。


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24 :翠縹
2024/10/04(金) 10:04

最後に髪を切ったのは何時だったか……随分と伸びてしまった。

戦闘の時に些か邪魔になるので紐で括ってみたが上手くまとめられなかった。思えば、肩に着くまで髪を伸ばしたのは生まれて初めてだったかもしれない。顔周りの片側をまとめると逆側が落ちてくる。それでもまぁ、取り敢えず纏まっていればいいかと思ったが、いつも身なりを綺麗に整えている弦月の彼の隣に立つことを考えるとそうもいかない。やっぱり直ぐに切りに行こうと思いながら柄にもなく鏡の前で奮闘していたら丁度彼が部屋に入ってきて、髪を少し濡らしたらいいと教えてくれながら髪を結ってくれた。顔周りの髪を無理にまとめることはせず、後ろの伸びた髪は三つ編みにしたらしい。

手際が良かったから短い時間だったが彼に髪を梳いてもらうのは気持ち良かったし、この日は何度も無意識に彼が結ってくれた髪を触ってしまっていた。……直ぐに短くしてしまおうと思ったんだがな。暫くはこのままでいようと思う。

自分でも綺麗にできるようにするが、また結ってくれないか。


仕方ないなぁ、結んであげる!
でもその後ろの毛、しっぽみたいで可愛いよ。


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23 :弦月
2024/09/18(水) 12:59

翠縹の彼は俺が何を着ても褒めてくれる。……多分。

そりゃね、俺も普段は突拍子もないような格好はあまりしてないつもりだけど……ちょっと揶揄うくらいの気持ちで面白半分に女装して「流石にキツいでしょ」って見せたら、「可愛いな」って言い出して俺ビックリしちゃって。俺、身長も80イルム近くあるし顔も別に女顔とかじゃないし我ながら笑えるくらいだったんだけど、「落ち着いて」って言ったら「正気だ」って言ってた。絶対正気じゃないよ。

でも本当に何着ても真剣に褒めてくれるから、つい色んな服を着て見せたくなっちゃうんだよね……「白が似合うな」なんて言うから、白い服ばっかになっちゃったよ。


いつだって正気だが?
君はいつもお洒落で可愛くて
会う度に好きだと実感している
……45万ギルの依頼は無いだろうか

その45万ギルの件なんだけど、解決したから期待してて。


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22 :弦月
2024/09/03(火) 17:09

請けた仕事のために道を急いでて、バイクで山道走ってたら目の前に突然アンテロープが飛び出して来てびっくりした。ぶつからなくて良かった……流石にバイクで衝突したら、多分アンテロープじゃなくて俺が飛んでいく羽目になるかんね……。



いつぞやの夜、冒険者仲間二人と一緒に野営してたとき、料理を二人にブン投げて俺は哨戒にあたってたんだ。まあ彼らはミッドランダーとハイランダーだったし、俺が一番目と耳が良いから、必然的に。

二人が料理をする音に混じって異質な何か聞こえた気がして、俺は音がした方向を見た。丁度そう……1マルム先くらいかな、数人が闇夜に紛れて歩いているのが辛うじて見えた。夜盗だね。こちらの灯りを見て向かってきているようだった。
咄嗟に弓を手に取ってそいつらが射程に入る頃合まで待って、矢をつがえて、放った。勿論、一発目は当てない。それで逃げるのなら見逃してやろうと思ったから。でもそいつらはその矢に腹を立てたようで、こちらに走って来たんだ。でも残念ながら、俺はお前らの死角に居るし、俺の間合いのが広い。

夜盗を片付けた後、念のための確認でそこまで降りて行ったら、流れ矢でドードーが死んでてね。悪いことをしたなあって思いつつそのドードーを抱えて野営地に戻ったら「誰が捌くと思ってるんだ」「タイミングってもんがある」って非難囂々だった。だって命が勿体ないって思ったんだもん……。


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21 :翠縹
2024/08/23(金) 16:18

ついにトラル大陸への渡航許可がおりて、リュックに荷物をパンパンに詰め込んで船に飛び乗ったのが数日前。
弦月の彼から話を聞いてからずっと行きたくて堪らなかったトライヨラに足を踏み入れることができた。

海が物凄く綺麗で、今までに訪れた国とはまた雰囲気が異なる街並みに船を降りてからずっと感動しっぱなしだった。何よりも、彼が見た街並みを見られたことが何よりも嬉しかった。……まぁ、相変わらず迷子になって同じ場所を行ったり来たりしてしまったんだが。

そんなこんなで暫くウロウロしていたら突然の大雨でびしょ濡れなってしまって呆然としていたのだが、彼がエーテライトで駆け付けて傘を持って来てくれた。彼のこういうところも本当に好きだ。

そして、もうひとつ。
真っ白のふわふわとした可愛い生き物を連れて来てくれた。シマエナガという種類の鳥だそうで、ずっと周りをパタパタと飛んでいる姿がとても愛くるしかった。

これからはこの子と一緒に新大陸を旅して、色んなものを見ていきたいと思う。



君ともいろんな所へ行ってみたいな。それと、君が好きだと言っていた酒を一緒に飲んでみたい。もちろん奢るし、宿もちゃんと押さえておくから。


……へえ、やるじゃん。
酔っ払いすぎて取った宿でただ爆睡しただけ……なんてことにならないといいんだけど。

下心込みなので寝かせるつもりはないな。


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