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┗141.有明月(2冊目)(4-8/38)

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8 :夏油傑
2024/08/09(金) 00:00


二年

今日は悟と出会って丸二年が経つ記念日。一年を超えてからはあっという間に過ぎ去った気がしている。私たちはデートにも赴かなければ旅行にも行かず、猿どもとの接触を絶って二人きりで暮らしているから劇的なことは特にない。平凡な日々を過ごして時々大喧嘩をして、二年の間に別れる別れないの危機も一度あった。平凡な暮らしなのになんで喧嘩になるのかお互い分からないけれど、一度喧嘩になるとギクシャクしてなかなか折れない。頑固でもなきゃ特級になれやしないから当然なんだけどね。悟が怒りをあらわにすることは珍しいけれど、たまに悟が怒るとそれはそれは特大級の喧嘩になるよ。高専のころだったら校舎を吹っ飛ばしていたね。そんな風に喧嘩しつつもなんだかんだ仲直りして疲れたら横たわって、毎日「おはよう」と「おやすみ」を繰り返すうちに二年が経っていたのさ。喧嘩してない時は仲良しだよ。
実は記念日の直前私が体調を崩していた。喉の痛みから始まり、発熱、倦怠感を経て腹痛、口内炎といろんなところがぼろぼろになり、治った今も頭にモヤがかかったような感覚はなかなか抜けない。おかげで日記の筆を執れない日が続いていたんだけど記念のことは書き記しておきたいからね。
二年の記念に悟が夏野菜のカレーとスフレチーズケーキを作ってくれた。カレーは私と悟にとって特別なメニューなんだ。一緒に食べてチーズケーキをいただき、二年を祝った。
これまで、毎月祝ってきたことのほうが、やってること自体は豪華だと思う。贈り物をしたり、豪華なご馳走を並べたりしてきた。二年という節目に何をしようか悩む悟に、私はなんら変わらないものでいいと言った。
なんら変わりないことが、きっと私たちを象徴すると思ったから。

まぁ、その夜に揉めるなんてそれも私たちらしいじゃないか。
揉めたら頭を冷やしたくなる私と、そばにいたがる悟でよくすれ違うけど流石にヒートアップしたくなかったから頭を冷やさせてもらった。
舌に馴染まない苦味の煙草を吸い、紫煙を吐き出し、真夏の蒸し暑い湿気と熱気を孕んだ夜気の中で酔えもしない酒を飲む。美味しくもないもののおかげで冷静になる。真夏の蒸し暑さの不快感のおかげで頭が冷える。鬱陶しい虫がまとわりつき、今は少なくなってきた蛍光灯に焼かれ落ちていく姿を眺め、夜だというのにどこかから聞こえてくる蝉の声に急かされるように煙草を始末して土産の羊羹を持ち、悟のもとに帰ったよ。
もう夜遅かったし私は眠かったから、悟より早く寝た。朝はいつも起きてこない悟と早起きな私。夜はよく寝る悟と少し夜更かしな私。睡眠時間が短い私と長い悟。そんな私たちだから私が先に寝るのは珍しい。悟は当てつけと思ったかもしれないけど本当にただ眠かったのさ。

二年経って変わらない毎日を過ごして記念日に揉めたりしながら、やっぱり悟が好きだな、と思うんだ。
ああ、迎えにきてよって言えばよかったかな。でもそんな10代の女の子みたいなこと、教祖もやってる私がするのは恥ずかしいしさ。
とりあえず三年を祝えるように頑張るつもり。
二年間ありがとう、悟。愛してるよ。



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7 :夏油傑
2024/07/22(月) 13:26


こいびと

一冊目の日記には鍵をかけたままだから、改めて私たちについて馴れ初めや、いろんなことを紹介しておこうかと思って筆を執っている。日記を入れ返してくれたり私信をくれたりした君たちはありがとう。また機会を見ていずれ私信をさせてもらうね。
私たちが再会と呼んでいる出会いは2022年の8月9日。それから一週間後に密会を取りやめるより傍に居続けることを選んだから、いわゆるお付き合い記念日は8月16日になる。8月9日のあの日、私は夜明けに目が覚め、まだ陽がのぼらない海辺をさまよい歩いていた。昔、悟と任務で海に行ったり、ナマコにはしゃぐ悟を見守ったことを思い返したりしながら、もう果てしない夢の向こうに追いやってしまった親友の姿を波打ち際に探していたんだ。私たちが再会するときは殺し合いをするときだろう、と思いながらね。そんな時に波に押されたり引かれたりしている小さなボトルを見つけた。拾い上げてみると中には一通の手紙。「拝啓、親友殿へ」なんて書き出しで一週間、私と会いたいと大海に投げられたものだった。私は悟が落としていた「敬具」を拾って手紙を書き、ボトルに入れて悟に届けた。密会場所への道順が届けられたのはその日の夕方だったかな。
密会場所で私たちは数年ぶりの逢瀬を果たした。悟はサングラスをやめて怪しい包帯姿になっていたし、私はいかにも胡散臭い教祖姿になっていたけれど口を開くと青春を共に過ごしたあのときの悟のままで……時間を忘れて語らった。笑って、楽しんで、寝る間際には「持ち帰り」と称してお互いに押し付け合った。持ち帰ったほうが悔しがったけど、あれは私たちなりの「明日も会う約束」だったんだ。悟は本当に優しかった。今も変わらずに優しいままだよ。私たちはお互いを楽しませようと色んな話をしたし、私はウクレレをマスターして悟はフラダンスをマスターしたね。悟は優しいし楽しいし面白いのだけど、あの頃一番嬉しかったのは「教祖となり大義を抱いた私をそのまま受け入れてくれた」ことかな。だから数カ月はいつかはぶつかり合う未来を覚悟していた。共に歩むうちに大義と悟の夢がぶつからずに済む方法を探して合意するまで、いつか、殺し合うことも胸に覚悟して私たちは共にいた。
私たちはまだ二十代前半だから本来あるべき未来より過去を生きている。本来の未来は、本来の私たちに任せて私と悟は「あったかもしれない未来」を一歩ずつ刻んでいるところだよ。
あの頃……再会したころ、私も悟も恋愛を全く意識していなかった。お互いに疲れ果てていたというのもあったし私は長い長い物語を酷い形で幕を下ろされたばかりだったし悟は傷つくことが多くて、ただただ、親友と話したいって、それだけだったんだ。
それなのに私も悟も一目惚れをして今も一緒にいるのさ。
縁って不思議だね。あるべきときにあるべき縁に引き寄せられる、悟と出会う運命なら、私は信じたい。
ふふっ、少しは伝わったかな。私たちのこと。



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6 :夏油傑
2024/07/17(水) 10:58


心理テスト

密かに読ませてもらっている日記に心理テストが置いてあったから、悟とやってみたよ。私の答えは1の書斎のデスクで悟は2の寝台の上だったんだけれど。

答えが出るので折り畳み私は恋愛に慎重な方で悟はマメでアタックする方。…結構当たってるんじゃないかって悟と話していたんだ。普段は悟の方が控えめなんだけれど要所要所で私のことが好きだって激しくなるのも悟でね。私はどちらかといえば悟の負担になるんじゃないかって考え込んでしまうほうだから。お互いに大切にするやり方が違っているだけで、お互いを大切に思ってることには変わりないんだよね。ふふ、思い返せば確かに悟は情熱的で今でも私にアタックしてくれているよ。

私たち、実はいろいろあってちょっとギクシャクしていたんだが、心理テストはいい緩衝材になったように思う。新しい風というのかな。二人で袋小路に迷い込んだときに気分転換になって、そこからいい方向へ向かった気がする。
好きだからこその苦しみもあるし、好きだからこその幸せもある。苦しいときも、苦しいのは好きだからなんだって実感する。それほど好きなひとがいることにも、それが悟であることにも、感謝しているんだ。最後は幸せだと思う。悟が私を好きでいてくれるかぎり、しあわせだよ。


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5 :夏油傑
2024/07/16(火) 14:30


二十三ヵ月

今日は私たちが付き合って二十三ヵ月の記念日。悟からはプレゼントとして二冊目の日記と、七海が書けるようにもう一冊の日記をもらったよ。濃やかな思いやりにあふれたプレゼントで嬉しいね。悟はいつも考え抜いたプレゼントをくれるんだ。ごちそうでも、形に残るものでも、いつも気持ちを込めてくれる。私といて幸せだと言ってくれることが当たり前じゃないんだ、と気を引き締めて、あらためて悟に感謝したいと思っているよ。

七海は以前にも書いていたんだけど諸事情で一度日記を閉じることになってね。前々から悟が日記の装丁をしてくれていたこともあって、心機一転はじめから書き直すことになったんだ。日記のタイトルに見覚えがある子がいてくれるかはわからないけど、もう一冊の方もまた緩いペースで書いていくつもり。更新は亀のような速度だけれど、場所をお借りするよ。

何年一緒にいても大きな喧嘩がない子たちもいれば私たちのように波乱が起きていたカップルもいる。ひと波乱乗り越えたらまたひと波乱起きて、そんな風にして気が付いたら二十三ヵ月経っていた。どの喧嘩のときも最終的にはすり合わせたり、意見を交わしたりしてきた。お互いに頑固だからぶつかるときはぶつかるんだけど一度も嫌になったことはない。これが私たちのスタイルなんだと今では納得しているんだ。

あと一ヶ月で二年になる。短いようで決して短くはない年月を共にしてきた。これからもよろしく、悟。君が好きだよ。なにがあってもね。



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4 :夏油傑
2024/07/15(月) 18:19


最強と最悪

2022.08.09~

時間軸:離反から数年後、百鬼夜行の前のどこか

五条悟
現代最強の呪術師にして東京校の教師。どこかの教祖にこっそり貢ぎ中。
ボトルメールを流した方。
ときどき白い子狼になる。


夏油傑
最悪の呪詛師と名高い教祖。どこかの教師に貢がれているので教団運営に余裕がある。
ボトルメールを拾った方。
ときどき黒い子猫になる。

離反はしたものの百鬼夜行は行われないだろう世界で二人で生きている。そんな最強と最悪のふたり。小さな一軒家で密かに同棲中。

「因縁でも縁は縁だよ、悟」
そんな一通の手紙から始まった、ひとつの再会の話。




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