あー……誕生日にまで喧嘩したくなかったんだけどな。うまくいかねぇもんだ。

愛することも愛されることも、難しいことだよな。知ってたよ。
愛してほしい、なんて言わなきゃよかった。誰かに好かれたいなんて、オレには分不相応だったな。

愛されてるのも、大切に思われてるのも知ってる。それが難しいことも、尊いことだとも、全部お前の傍で覚えたことだった。こんなワガママが言えるのも、お前が愛してくれているのをちゃんと感じているからだと思うよ。お前がオレを見放さないだろうって思うから、甘えたことをいうんだと思う。お前のことがこんなに好きじゃなきゃ、寂しさなんて感じねぇよ。ただ、自分ばかりなのかと時々寂しくなるんだ。お前がそうでないのは知ってるつもりだけど、オレはお前に赦されて、ずっとずっと欲張りになったから。だから、愛されていないなんて、大切に思われていないなんて、そんなことはきっとただのワガママだったと思う。傷つけてしまったよな。ごめん。昨日だってちょっと文句を言って終わらせるつもりだったのにな。いつも簡単な小言がいえないから、たまにパンクしてる。お前はいつでもオレを見てるのに。

寒いからあったかい格好して出ろよ。帰りを待ってる。

あけおめ。今年もよろしく。
今年は巳年か。あー……いや、親が巳年だったような気がしたけど、気の所為だったかも。わかんねぇ。

おせちの具材、何が好き？オレは無難に黒豆かな。栗金団もすき。作るのはめんどいけどな。あ？……あーいや、作ったり作らなかったり。めんどかったら適当なとこで注文するし、作るにしたっていくつかだよ。種類多いとめんどいだろ。それにお子様舌がいるから、正月から唐揚げにエビフライにかき揚げも揚げる羽目になってる。昼のうどんの入れるからついでに揚げろってさ。あ？真経津だよ。あいつうちに入り浸る気でいるんだぜ。御手洗が帰省しちまったから暇なんだろ。叶と天堂も明日は来るってさ。正月から二人でなんかして忙しいらしいから明日来るって……何してるかは聞かなかった。懸命だろ。

先生は明日から仕事か。おつかれさん。忙しそうだけど無理すんなよ。終わったら迎えに行くから。ちゃんとおせちも取っとくから。はいはい、ハムも用意してますよ。なんかよく貰うんだよなハム……そりゃ御歳暮といえばだけど、オレとしては料理油とかほしいけど。冷蔵庫ハムだらけなんだよ。食うやついるからいいけどな。

あー、夜ふかししちまった。正月ってなんかリズム狂うよな。ねよ。おやすみ。

海老天乗っけた年越しそばをすすりながら、隣のお医者様は特番に夢中。歌番組好きなんだ。オレはあんまり興味なくてぼんやり見ながら相手の足を足でなぞって遊んでた。はしたないぞ、とこちらを見ないでたしなめてくるけど、だったらこっち見ろっての。オレは構って欲しいだけ。遠慮されたのか何なのか友人たちは年越しバラバラで、恋人は明日実家に帰るらしいので。一緒に来るかと言われたが挨拶もそこそこなのに流石に正月にいきなりお邪魔したりするわけにはいかねぇだろ。一人二人増えたところで気にしないと思うが？とコテンと首を傾げられたがそういう問題じゃ…そういう問題じゃねぇんだよ。せめてもの御歳暮をもたせるか、めちゃくちゃ悩んでいる。悩んでいたら恋人が
>ハムがいい……が、実家に持っていくと私の取り分が減るので帰ってきてからあなたが焼いてくれたらいい
と食べることだけ考えている。いや、ハム以外でもいいけど。洗剤？油？ビール？海産物？何がいいか、いや、そもそも御歳暮とか今更？
>父はカステラが好きだぞ
ありがたい情報だけどカステラが御歳暮はなくねぇか？流石に。



もうあと数十分で年越しだな。
>姫納めと姫始めはよかったのか？
ととんでもねぇことを言い出す恋人を尻目に、2024年をぼんやり振り返った。楽しかったな。早かったな。忙しなかったな。騒がしかったな。愛おしかったな。2025年はどんな年になるだろう。
>2025は45の二乗だ
おう、だから何なんだよ。かわいいなお前は。ここまで連日勤務のお医者様は明日だけ休んでまた2日から出勤。姫始めは次の休み前まで持ち越し。来年もよろしくな。愛してるよ。

日当直だか外勤だか色々言われたがオレには違いがわかんねぇし、とりあえず仕事だということはわかった。元日だけ休みだって聞いたが親御さんとこに帰省するんだろうし年末年始は会えねぇんだろうな〜と思ってる。一昨日いつものメンバーで天堂生誕祭後夜祭かつ忘年会っていうどんちゃん騒ぎをしたし、まぁ忙しそうだから仕方ねぇよなって思ってる。今日話しを聞いてたら同僚がインフルだの何だので仕事出れねぇから更に忙しくなるとか言ってた。大変そうだな……。弁当作ってやるくらいしか労る方法思いつかねぇけど、作って良い？。あー……明日は当直だっけ？なんか夜食作って……そうだな、牛肉あるから甘辛く炒めて、あと唐揚げと、卵焼きもいれて……って感じでどうだ？



猫って相手によって鳴き声変えてるらしい。相手が子どもだと思えばにゃーにゃー、自分が子どもで相手に甘えるときはにーにー、って感じらしい。へぇ、って思いながら、うちの猫さんはにーにー鳴くなぁってちらっと見たら、少し恥ずかしそうにカーテンとこに隠れてた。何も知らねぇオレに甘えん坊がバレてはずかしいのか？かわいい。良いじゃねぇか甘えん坊。今夜も抱っこして寝るからおいで。

サンタは無事にやってきたようだ。

尋ねた6人のうち一番まともな返答をよこした同僚の意見を採用し、クリスマスにはピアスを送った。つけているところは見たことがなかったが穴が空いているのは知っていた。耳をしゃぶるときそこを舐めてやると悦ぶ。人に施す愛撫は本人も心地の良いところなのだろうと思い、私にするのと同じようにしてやると反応がいいので楽しい。彼は割と気持ちよくなれるところが多いのでやっていて楽しいが、最初から快感を拾う事ができる場所ばかりでもないので、そう躾けた人間がいるのだと思うと少し思うところもあるが。彼が経験豊かなのは私には幸いでもあるが、少しばかり妬けてしまうというものだ。こういう感情があるというのも、つい最近覚えた。いや、正確には感じたことはあったのだが、彼に対しては簡単にそういった感情が湧き上がることを覚えたとでもいうべきか。らしくもなく独占欲を晒している。そんなつもりはなかったんだがな。

見える位置に印をつけたい、などと思うことになろうとは。いや、もともとは「何か身につけられるものがいいんじゃないか？」と提案されたのに従おうとしただけだ。寒いからマフラーとか手袋なんて定番だし、アクセサリーを送るのもいいかも。関係性とか相手のファッションの趣味にも寄るかなぁ。そんな事を言いながら奥方に贈られたという上品な深い赤のマフラーを見せてくれた。結局は何をもらうかより誰からもらうかが大事だとは思うけど、村雨が選んだならきっとなんでも喜んでくれるんじゃないかなぁ。人好きのする顔でそう言ってのけるのでなんとなく納得してしまう。流石人誑しなだけはある。

選んだのは小粒の赤い石が光るシンプルなピアスだった。カフスも考えたが、あまりしているイメージがなかった。いや、ピアスもイメージ自体はないが、つけて欲しいと思ってしまった。店先で選ぶとき、始めは彼のイメージで黄色い石を探していた。けれどケースに並ぶ石を眺めて、気づけば赤い石を選んでいた。わかりやすい独占欲に我ながら笑ってしまいそうだ。自分の色をまとってほしいなどと、あからさまがすぎる。

ベッドの上で靴下の中身を確認して少し泣きそうになっていた良い子を抱きしめて。箱の中身を確認されるのが少しだけ恐ろしかった。自分がそんな感情を持つことができることに驚いた。喜んで欲しい、という気持ちとともに、期待した反応がかえらなかったら、と一瞬でも考えてしまうことに驚いていた。緊張などというものは無縁なつもりでいた。そんなことはない。私もそこいらの凡夫と何も変わらない、恋に落ちたマヌケだということを良く理解した。