Hyvää joulua!
サンタクロースを信じたことはなかった。
いい子のところにはサンタがプレゼントを持ってくる。だからプレゼントもらえない自分は悪い子なのだと、寒さと空腹を紛らわせる理由の一つでしか使ったことがなかった。
金を稼ぐようになってからは欲しいものは何でも自分で手に入れられた。幸福のチケットを稼げば物欲を満たす事はできた。金で買えないものなんて、この世にそう多くはない。色とりどりのイルミネーションも温かい部屋も腹を満たすごちそうもケーキも、全部金で買えた。ただ、心が満たされることはないのだと、それは金で買えないものなのだとうっすら気づいていた。満たされない心を埋めるためにはどうしたらいいのかわからなかった。人肌を求めても、慈しみを求めても、素直になりきれず金と虚勢で塗り固めた外側を愛してもらったところで、結局最後には虚しくなるだけだった。誰かの特別になりたかった。クリスマスの夜に靴下にプレゼントをもらえる、とびきりのいい子になりたかった。
先に風呂を済ませた恋人が、寝室で見慣れない服装でちょこんとベッドに腰掛けていた。落ち着いた色で揃えた寝室の調度品から明らかに浮いている鮮やかな赤とふわふわとした質感の白で構成されたそれは、先週末に仲間内でやったクリスマスパーティーで着ていた衣装だった気がする。5人のうち3人ものピカピカのサンタは、各々たらふく料理を食べてはギャンギャンとかしましく騒いでいた。いつも通りありったけのいちごとご所望のステーキを独り占めしていたサンタが、ベッド縁で足を組み変えて薄っすらと笑っている。
>恋人と初めて過ごすクリスマスのプレゼントについてアンケートを取ったところ、6人中5人から「恋人はサンタクロース」で「プレゼントは私」という回答を得たので参考にしたが……悪くないようだな?
手首に申し訳程度に巻かれた金色のリボンがそうなのだろうか。アンケート人数の半数に心当たりがないまま、思い切り抱きしめた。
翌日はクリスマス当直だと言っていた恋人に鼻先をつん、と人差し指で突かれながら
>今夜いい子にできるなら週末に褒美をやろう
>私のトナカイはいい子に待てができるな?
と甘く囁かれて、加減はしたはず。多分。
加減はしたものの疲れていたのかスコッと寝落ちた恋人の身体を綺麗にし、あったかい格好をさせてから寝かせてやった。着替えさせるために軽く揺すったが、疲れていたのかぐずるばかりで起きる様子もなかった。いつもの多忙に輪をかけて忙しそうな恋人に無理をさせた気もするが、クリスマスはいっしょに過ごしたいといってくれるのは嬉しかったし、特別をもらえるのはとても幸福だった。いつかの願いが叶ったのだと、愛おしい気持ちでたまらなかった。
早朝、いつもの時間に目を覚まし、腕の中の恋人をゆっくりと抱きしめてから起き上がる。朝食を豪華にして、疲れた恋人を少しでも労いたかった。
ふと、枕元になにかがあることに気づいた。それは、寝るときにはなかった、見覚えのない、ふかふかした毛糸の……靴下?
一瞬固まった。言葉が出なくて、指先が震えた。見覚えのない赤と白のシマシマの靴下を、そっと拾い上げて中身を見た。
#Merry Christmas. 素敵な一日を。
キラキラとまばゆい包み紙のチョコレート、小さくて四角い箱、そして金のリボンを巻かれた小さな絵本。泣き出しそうなオレの隣で、やっと目を覚ました恋人が小さな口を大きく開けてあくびをしている。
>今年のサンタは迷子にならずにきちんと良い子のところに辿り着いたようだ
いたずらっぽい目をしたオレだけのサンタを、もう一度しっかりと抱きしめた。
いい子のところにはサンタがプレゼントを持ってくる。だからプレゼントもらえない自分は悪い子なのだと、寒さと空腹を紛らわせる理由の一つでしか使ったことがなかった。
金を稼ぐようになってからは欲しいものは何でも自分で手に入れられた。幸福のチケットを稼げば物欲を満たす事はできた。金で買えないものなんて、この世にそう多くはない。色とりどりのイルミネーションも温かい部屋も腹を満たすごちそうもケーキも、全部金で買えた。ただ、心が満たされることはないのだと、それは金で買えないものなのだとうっすら気づいていた。満たされない心を埋めるためにはどうしたらいいのかわからなかった。人肌を求めても、慈しみを求めても、素直になりきれず金と虚勢で塗り固めた外側を愛してもらったところで、結局最後には虚しくなるだけだった。誰かの特別になりたかった。クリスマスの夜に靴下にプレゼントをもらえる、とびきりのいい子になりたかった。
先に風呂を済ませた恋人が、寝室で見慣れない服装でちょこんとベッドに腰掛けていた。落ち着いた色で揃えた寝室の調度品から明らかに浮いている鮮やかな赤とふわふわとした質感の白で構成されたそれは、先週末に仲間内でやったクリスマスパーティーで着ていた衣装だった気がする。5人のうち3人ものピカピカのサンタは、各々たらふく料理を食べてはギャンギャンとかしましく騒いでいた。いつも通りありったけのいちごとご所望のステーキを独り占めしていたサンタが、ベッド縁で足を組み変えて薄っすらと笑っている。
>恋人と初めて過ごすクリスマスのプレゼントについてアンケートを取ったところ、6人中5人から「恋人はサンタクロース」で「プレゼントは私」という回答を得たので参考にしたが……悪くないようだな?
手首に申し訳程度に巻かれた金色のリボンがそうなのだろうか。アンケート人数の半数に心当たりがないまま、思い切り抱きしめた。
翌日はクリスマス当直だと言っていた恋人に鼻先をつん、と人差し指で突かれながら
>今夜いい子にできるなら週末に褒美をやろう
>私のトナカイはいい子に待てができるな?
と甘く囁かれて、加減はしたはず。多分。
加減はしたものの疲れていたのかスコッと寝落ちた恋人の身体を綺麗にし、あったかい格好をさせてから寝かせてやった。着替えさせるために軽く揺すったが、疲れていたのかぐずるばかりで起きる様子もなかった。いつもの多忙に輪をかけて忙しそうな恋人に無理をさせた気もするが、クリスマスはいっしょに過ごしたいといってくれるのは嬉しかったし、特別をもらえるのはとても幸福だった。いつかの願いが叶ったのだと、愛おしい気持ちでたまらなかった。
早朝、いつもの時間に目を覚まし、腕の中の恋人をゆっくりと抱きしめてから起き上がる。朝食を豪華にして、疲れた恋人を少しでも労いたかった。
ふと、枕元になにかがあることに気づいた。それは、寝るときにはなかった、見覚えのない、ふかふかした毛糸の……靴下?
一瞬固まった。言葉が出なくて、指先が震えた。見覚えのない赤と白のシマシマの靴下を、そっと拾い上げて中身を見た。
#Merry Christmas. 素敵な一日を。
キラキラとまばゆい包み紙のチョコレート、小さくて四角い箱、そして金のリボンを巻かれた小さな絵本。泣き出しそうなオレの隣で、やっと目を覚ました恋人が小さな口を大きく開けてあくびをしている。
>今年のサンタは迷子にならずにきちんと良い子のところに辿り着いたようだ
いたずらっぽい目をしたオレだけのサンタを、もう一度しっかりと抱きしめた。