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┗284.酔い花かしずく(1-5/18)
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5 :榎木津礼二郎
2024/11/09(土) 03:57
ふいに目が覚めた。虚ろな網膜に映ったのは、投げ出してある自分の手と黒色。静まり返った空気の中、鼓膜を揺らす穏やかな呼吸音と微かな寝息。鼻腔を擽った伽羅の匂い──。
ああ、居るなあ。
漠然と──そう思った。
眠っている間に解けてしまった抱擁を優しく元通りにすれば、緩やかな鼓動が身体の内側に響く。途端に全身の力が抜けていくような安心感に包まれる。不安に思う事など何も無い筈なのに。
殆んど音にもならない声で名前を呼んでみると、微睡みを感じさせるのんびりとした手付きで、然も子供をあやすように背中を撫でられた。どうやら起こしてしまったらしい。
詫びのつもりで前髪に口づけを落としたら、俯いたまま微かに笑った気配がした。なんだか妙に泣きそうだった。
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4 :榎木津礼二郎
2024/11/08(金) 03:36
華奢な手首、薄い皮膚に浮かぶ骨と静脈の陰影──。
昔からずっと、お前を象るどれもこれもを気に入っている。
目は口ほどに物を言うらしいが、この男に限っては黒目よりも節張った手の方が幾分素直だ。相変わらずの仏頂面でも、文字を追って頁を捲る際には愉悦が混じり、膝の上で眠る飼い猫の頭を撫でる際には仄かな慈愛を感じさせる。
そして、躊躇いがちに僕の髪を梳く時は、決して言葉にしてはならないと己で戒めているのだろう願いが滲む──。
当人には自覚もない。無論断言出来る。あれは己の事となれば途端に不器用を極めるお人好しだ。敢えて情を含ませる真似などしないのだ。否──出来ない、が正しいのだろう。
だからこそ、心の所在が分からなくなりそうな時にはこうして手を見る。何かしら読み取ったとしても言及はしない。軽口序に指摘しようものなら金輪際垣間見える感情さえも隠されてしまう事が明白なだけに、今までも口に出した事はない。
とは云え、そうも分かりやすく照れ臭そうにされては僕だって大人しくしていられないぞ。──たった一言。たかが四つの音で明らかに落ち着きがなくなった右手をいっそ握っておこうとしたが、案の定強めに叩かれてしまった。
こうも可愛くないのに、一体全体どうしてこんなにも可愛くて仕方がないのか。恋とは摩訶摩訶不思議なものだなあ。
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3 :榎木津礼二郎
2024/11/07(木) 13:01
頬を撫でた風が、いつの間にか冷たくなっていた。青々としていた緑も色を変えて地面に広がっている。改めて意識してみれば街の至る所に秋が広がっていた。
気付いた時には疾うに季節が巡っている。生き急いでいるわけでもないのに、いつだって振り返っている事実に少し驚いた。
「榎さんにしては抒情的だな」
「秋刀魚を焼く匂いは秋の呼び声だゾ! うっかりだ!」
「ものの数秒で前言撤回したくなる気持ちにさせないでくれ」
「ふふふ。お前の季節だなあ」
「毎年毎年飽きもせず同じ事を」
「僕はやっぱり秋が一番好きだぞ、中禅寺」
それっきり黙り込んだ仏頂面の男を見つめる。返ってきたのは嘆息だけだったが、その音には安堵が滲んでいたように感じた。恐らく思い過ごしではないだろう。
そうだ。安心していい。僕は変わらないよ。
快い秋晴れだ。まさに昼寝日和だ。にゃんこは何処へ行ったのだろう。足音も聞こえないな。
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2 :榎木津礼二郎
2024/11/07(木) 03:42
[この手記について]
感興の赴くままに言葉を遺す場所。多方面に配慮を欠くだろうから、もし頁を捲るのなら自己責任だ。とは云え、この走書きを読み解けるのは酔狂な馬鹿本屋くらいなものだろうなあ。
[書き手について]
時間軸は学生時代~探偵、疎らに。時系列順に非ず。
懸想する相手はたったひとり。
>よく寝てよく食べてよく笑う。躁病の気がある。昔から気っ風が良い。妙なところで察しも良いがあまり有難くはない。言葉よりも行動に重きを置く。時にはこちらが困り果てる程の頑固者。ひと度拗ねると手がつけられなくなる。この追記にも暫くは気が付かないだろう。あんたの御蔭でいっときも厭きないよ、榎さん。
>今気付いた!! いつ書いたんだ!? どうして言わない!?
(随時編集予定)
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1 :榎/木/津/礼/二/郎(百/鬼/夜/行/シ/リ/ー/ズ)
2024/11/07(木) 03:39
酔い花かしずく
半完混合|同性愛表現|閲覧自己責任
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