ある程度広いやろと勘違いしとった俺の心は、
皮を剥いでみると恐らく実は人並み以下やて
日々気付かされて戸惑いに飲み込まれとる。

忙しさを疑う余地も意味もあらへん。
言葉も仰山くれとるし、毎日挨拶も交わしとる。
分かっとる筈なんに、曇り空のよに心を覆う
灰色の靄をどないしても払えへん。
ほんまは常に晴天のよな晴れ切った心で居りたいんに、
簡単に曇る自分の心と不安に向き合えへん
そないな自分を見せたなくて逃げたなる。

財前はある意味俺とは反対で、
逃げんと心を覆う靄を正面から曝け出す。
せやけど受け止める過程で垣間見える
財前の靄の正体は俺のそれと似とって、
財前の心の大きな波に身体は抗うふりして
内心はどっかで安心しとる。
好きな子を使う最悪な靄からの逃げ方や。

きちんと自己解決の方法を見つけなあかん。
（せやけど軟膏は買うて来てや、絶対切れたで）

ここ数日で決めたマイルール２つ。
一つは日記の色と書く時の形、
も一つは寝る前に出来るだけお休みて告げる事。

毎朝貰う「おはよう」を
俺は当たり前のよに受け取っとったけど、
その当たり前があらへんかった朝にやっと
それは財前が時間を割いて
俺にくれとった小さな幸せやて気付いた。
これは毎朝無理して欲しいて話でも
回りくどいお強請りでも無く、
この気付きを忘れへんよに書き付けとく。


俺も幸せを毎日小さく千切って渡したいけど、
中々「おはよう」は返せへん。
せやから代わりにせめて、
「おやすみ」を言おて決めた。
財前が朝起きた時、少しだけほっこりするよに。
愛されてんねんなて思えるよに。

早寝早起き計画の成功は今んとこ1回きりで
ご褒美目当てのよになってしもとるけど、
いつかは継続出来るよに気張りたいとこ。
これが継続出来たら、挨拶が入れ違う事も無い。

ペン走らせては止め消してを繰り返して丸一日、
煮詰まった頭と手は遂に<触れたい>しか文字が書けへんよに。あかんあかん。
新学期やし、どっかダレ気味甘え気味の頭と気持ちを引き締め直して気張らんとな。

て格好付けたけど、自分の心の底に潜んどったどろどろとした心地悪い感情がまた身を潜めてくれるんを待っとっただけ。
そないな俺自身の浅ましさに嫌気が差す。
関係の名前が変わってから一月も経ってへんのに、
ぼろぼろ自分の中の仮面が剥がれてくよな感覚が怖い。
どないしたらこの醜い感情を心から追い出せるんか。

布団暖めて待っとるて言葉も、
待っとるうちにそのまんま夢ん中に堕ちてしもた寝顔もかわええ。

無理して起きとったか、ほんまに寝起きやったんかは
きっと教えて貰えへんやろけど
いずれにせよ擦れ違うとった分を
埋めよとしてくれとったんやろなと思う。

取り敢えず、寂しがらせてしもた分を埋め合わせせな。

休みはまた天気が悪なるらしい。
部活もオフになるやろし、
大人しく家でのんびりしよか。