スレ一覧
┗272.白刃に消ゆ。【半完混合、時に背後透過/R18】(75-79/83)

|||1-|||
75 :オルオ・ボザド
2014/03/31(月) 04:04

>「やぁ、こんな時間に偶然だね。眠れなかったのかい?」





そんな言葉を掛けられたのは、夜半も過ぎた頃だった。
壁外調査は特になく、悪夢にうなされ寝付けず、兵舎の食堂に居た俺に、ハンジ・ゾエ分隊長は語りかける。
巨人の話はこの間聞いて辟易していたから、俺は違う話が良いと告げた。

互いの間に珈琲を一杯。それを置いて、彼女の口が開くのを待つ。



>「死というものが、誰のためにあるのか考えたことはあるかい?」


彼女の問いかけを聞いた。
瞬間に、戦場に意識が連れ去られる。
生暖かい臓物。
悪臭を発する巨人の吐瀉物。
その吐瀉物は―――人間だ。

ブレードを持っていないはずの、俺の両手が震えて、背中に鳥肌が立ち上がる。
嫌悪だ。それは。よく知っている。

俺は、震える唇を開いた。


>「はい。……分隊長」


そんなもん、しょっちゅう考える。

考えないようにしていたって、俺の中にはぐるぐるとその疑問が渦巻いていやがる。

何度となく壁外遠征を生き伸びてきた俺の脳には、網膜には、捧げたはずの心臓には、この両腕には、そう。人の死が、細胞にまで染み込んでいる。だから。


分隊長の話は続く。

それは俺のよく知る風景の話しだ。

俺が遭遇した事のある、人間の最低さを見せ付けられるような場面の話し。


#ああ、俺もよく知ってる。


戦場は、残酷だ。
>(壁外遠征に出て、俺は何かを殺さず戻ってきたことが殆ど無ぇ)

無差別に無意識に無為識に人間を貪る、憎き巨人共なんかより、実際に存在する人間は残酷なクソ野郎だということも。
>(馬鹿らしいだろ。人間同士が生き残る為に足を引っ張り殺しあう)
>(俺は戦場で頭が狂った上司を殺した感触を思い出していた)
>(あいつがいるままでは俺の班は壊滅していた。だから俺は、まだ動くことが出来る上司の足を、ブレードで吹き飛ばした)
>(腕に残る、【慈悲】と違う、殺人の感触)
>(『化け物』そう俺を罵った上司の血みどろの笑顔も)



俺は知っている。
知ってしまったんだ。
珈琲をすすりながら、彼女の静かな声が静寂の中鼓膜を揺らすままに聞いていた。

――俺が口を挟む場面ではねぇだろう。
俺は、求められるまで口を開かないことにした。



>「―――――さて、此処で再び君に同じ質問をしよう。

>死は、誰のためにあると思う?

(死は、そうですね)
(死は――――)

>私は彼女の苦しみを終わらせるためにと、彼女に死を贈ったのだけれど…それって凄く、矛盾すると思うんだ。

>何故なら私は彼女ではないからね。

>私も君も、これから先何度も…巨人や人間の血で汚れていくと思う。
>それを慈悲と思うか罪と思うかは個人次第だとは思うけれど…

>自分が人間で在りたいのなら、一度その胸に問いかけると良い。


>死は誰のためにあると思う?」





「俺は……死は、生き残るヤツの為にあるんだと、思います」



#たっぷりと間を空けて、俺は答えた。



「死にかけた人間が選べるのは、緩慢な苦しい死か、一瞬で済む仲間による死か」

「その二種類でしょう」

「死に掛けた人間は死を選べねぇっすよね。ハンジ分隊長のお話してくれた彼女も。死を選ぶことは出来なかった。どんな場面でどうやっててめぇが死ぬかなんて、誰にも選べねぇもんです。少なくとも俺が過ごしてきた戦場で、自由に安らかに死に方を選べた人たちは居なかった」

「俺たち与える側が選ぶんです。死を。誰の為に死を与えるか。そういうのなら生き残っちまう俺たちの為にあるんじゃないでしょうかね」




[削除][編集]

76 :オルオ・ボザド
2014/03/31(月) 04:04

>珈琲に写る俺の顔はぼやけてよく見えねぇ。




目の前のハンジ分隊長は、巨人を相手にしてるときのような知的好奇心に黒い瞳を瞬いているように見えた。
けれど彼女の瞳の奥は濁りきって見通すことができねぇ。彼女が抱く感情も、何もかも。

>きっと、俺も今、こんな目をしてるんだろうな。

そう過り、口許を笑ませる。

そうだよ、ハンジ分隊長。

俺はアンタの同類だ。

生きながらに、人間のガワを被ったままに―――化け物になる事を選んだ。



「―――俺たち調査兵団員は『それ』を慈悲と呼びます」

「相手がどんなに生きたかろうが、手遅れであれば俺たちは刃を落とすことに躊躇いを持ってはならない。緩慢な死は、見てるこちらの精神を抉りますから」
>(慈悲だと。そんな言葉で正当化してるだけだ。知ってる。俺たちはただの人殺しだ)



「俺は、与える死も感受する死も、生き残るヤツの為にあるんだと、思います」


俺はもう一度、さっきの言葉を繰り返した。
戦場で俺たちが触れる死。
死は当人の為にある。そんなの詭弁だ。
戦場で俺たちが与えるそれらは、手遅れの人間に一方的に与える。―――それは一方的な、命を奪い取る暴力。だ。
それが喩え苦しみを終わらせる手段だとしても。
それは、―――紛れもない殺人。罪であると、認識していた。


>「そうか。君も、―――まだ十代なのにね。……ごめんよ」
「いえ。………もう、諦めました」



俺は笑う。
この腕がどんなに汚れていったとしても、人類の勝利に一歩ずつ近づけるのなら。
俺たちが守らねばならないものに希望を託せるというのなら。
俺たちは汚れるしかねぇだろ。
心臓を捧げた瞬間に、そう覚悟したのだから。



「ハンジ分隊長。俺からも質問です」

「あなたの中の化け物を肯定するに値する「未来」ってなんっすか?」

「俺の望むそれは―――【壁の無い世界】と【ガキの頃に見た貧しくも幸せな風景】を取り戻すこと。です。
そのためなら俺は、まだまだ殺して汚れて、壊れるまでこの腕を振るえます」


ハンジ分隊長の瞳が大きく開いて、やがて哀れむような笑みを浮かべた。
ああ。そうだよ。
俺とアンタは良く似てる。
何かを成す為に、俺もアンタも何もかも殺せちまうだろ。





>俺の肯定する世界。



>幻と知っても求める幻想。



>その未来の礎になる為に、俺は、―――望んで、化け物になってやる。


―――――

乱入ありがとうございました!ハンジ分隊長!
あまりに格好良かったので、お礼というか、レスポンスを製作させてもらいました。

貴女の疑問への俺なりの答えです。どうでしたか?
アンタは俺の同類、でしょう。
きっと全部でなくとも解る場所が有ると思います。ねぇ、ハンジ分隊長。
アンタも俺も人を殺す手をしてますからね。

はい!是非これからもよろしくお願いします!
もうちょいかかるかも知れませんが、私信はきっちり返させてもらいます!

素敵な乱入、ありがとうございました!!




[削除][編集]

77 :オルオ・ボザド
2014/03/31(月) 14:14

>桜の花も綺麗に咲いてきたな。




小春日和というヤツか。過ごしやすくて大変結構。
ってことで溜まってた私信を返すぜ!


>優等生日記 マルコ

ちょこちょこお前とは茶会で遭遇してるよな。だいたい俺の姿じゃねぇが(笑)
そりゃあれだろう。幸せそうなヤツは末長く祝いの意味で爆発してりゃあいいと思うぜ。そう、末永く幸せに爆発していろ。両思いのヤツはあれだ、無差別に爆発しながら幸せになりやがれ!俺たちはそいつ等の幸せを守る為に調査兵として戦い続けることをこの心臓に誓う(キリッ/格好良く敬礼)
俺の日記を褒めてくれてありがとうな…!調査兵としての俺の有り方が書けてれば、非常に嬉しく思う。
お前の日記も、マリモとの恋の行方も、今後ともじっくりstkさせてもらうつもりだ。精一杯幸せになっていつか裸エプロンをしてやれよ。


>くちくったー エレン
あれ以来ちょこちょこ茶会で会うよな、クソガキ(笑)私信ありがとよ。
あと俺は断じて可愛くない。日記を見てもらえば解るとおりハードボイルドでクソ格好良いっつってんだろナメてんのか新兵ぇ!(ギロッ)
俺はちまちま日記茶にも出没するからな。また会ったら是非頼む。
それと格好良いアイコンありがとうな!しっかり保存させてもらったぜ!


>二重人格症候群 ハンジ分隊長
私信、そんでもって乱入もありがとうございました!ハンジ分隊長!
リヴァイ兵長が恥かしがって…だと…?!
まさかハンジ分隊長とリヴァイ兵長がこの世界一ヶ月、なんて…!(白目)俺もお二人とこうしてやり取りできるのがとても嬉しいんです!
日々の戦闘訓練も本当にありがとうございます!いつも勉強にさせてもらってます。
戦闘もですが、私生活でも無理をなさらず、エレンとも仲良く過ごしてくださいね!




[削除][編集]

78 :オルオ・ボザド
2014/04/01(火) 00:19

>花屋の俺の花日記




>―――開店 AM9:00
今日はとても天気が良い。
俺の店先の花もとても綺麗に咲いている。

壁内は幸せだ。

数年前にリヴァイ兵長率いる、リヴァイ班という兵士達が人類の先頭に立ち、巨人化能力を持つ新兵と巨人を駆逐してくれた。
人類の領域はマリアを取り戻し、人口も徐々にだが増え始めている。

兵士を志した俺は、右足を負傷し兵団から脱退。
ウォール・ローゼ内で花屋を営み始めた。

春先はピンク色の可愛らしい花や黄色の元気な花がよく売れる。

さあ、今日も頑張って花を売ろう。
花と一緒にてめぇの想いを伝える奴も居る。
花と共に別れを切り出す奴も居る。
花屋の俺に出来るのはお手伝いだけだ。

あの人に気持ちを伝える花束を、
兵士を辞めた俺の頼りない腕が作る。
もう、戦わなくていい。

俺は優しい花束を作るんだ。


ピンクのガーベラ、カスミソウ、ピンクのカーネーションを併せて綺麗なリボンと甘い桃色の紙で包んだ。

「随分可愛いな。いかん。乙女か俺は」

苦笑しながら俺は花束をなでた。




>―――AM10:30
腹を大きくしたペトラが花を買いにきた。

ピンク色の可愛らしいポピーの花束を購入していく。

柔らかい布に包まれたアイツはしっかりと母親の顔になっていた。
相手はゲルガーさんらしい。調査兵団もマリアを奪還したお蔭で、俺が所属していた当初より死亡率が下がっている。

きっとあいつも、元気な子供を生むんだろう。

俺の母ちゃんの様に肝っ玉母ちゃんになるのかもしれない。

可愛い子供が生まれたら、俺の花屋につれてきてくれる約束をした。
今から生まれるその日が楽しみでならない。

アイツを自分の手で幸せに出来なかったのはイラッとするが、好きな人が幸せになる姿を見て気分が悪いわけが無い。

全力で幸せになってくれ、ペトラ。
俺の初恋の人。




>―――AM10:50
店外を掃除していたら、リヴァイ兵長と楽しげに話しながら歩くエルドを見つけた。
リヴァイ兵長も先の大戦で負傷し、兵役から解放されたと聞いた。
新しい我等調査兵団の象徴で有り、人類最強の称号を賜ったのは、エレンの同期のミカサ・アッカーマンだ。
そして人類の希望、エレン・イェーガー。
若き団長は、アルミン・アルレルトだという。

すっかり世代交代が起こっている。
俺はエルドに声を掛けた。
昔より柔らかくなった微笑を、奴は俺に向ける。

ああ、そうだよな。
俺がまだ新兵だったころ。お前もまだそこまで重荷を背負ってなかった頃、お前ってそういう笑い方だった。
いつからだったかな、エルド。お前の表情が貼り付けたみたいな笑顔になったの。
俺は天才だから気付いてたんだぜ。

リヴァイ兵長は一気に老け込んだが、眼差しが少しだけ柔らかくなってるように見えた。

……平和っていいな。

そう思いながら、俺は彼等に花を渡す。
リヴァイ兵長とエルドは墓参りに行くといっていた。
今まで散っていった兵士達の墓参りだそうだ。
俺はありったけの百合と白薔薇を包んで二人に渡す。
どうか、彼等に悼まれる魂が、幸せでありますように。

俺の分まで参ってきてくれ、と頼んで、二人の背に手を振った。

まだ俺は花束を作る仕事があるんだから、がんばらねぇと。




[削除][編集]

79 :オルオ・ボザド
2014/04/01(火) 01:07

>花屋の俺の花日記・2




>―――AM11:15
花屋の店先にちょこちょことガキ共が戯れている。
小枝を二つ持って、ブレードの真似事だろうか。
俺は片足を引きずりながらそのガキ共の遊びに加わった。

ガキ共は俺を花屋のオッサンと呼ぶが、俺はまだオッサンという年齢じゃない。ぴっちぴちの二十代だ。
だが俺が子供の頃、二十代のオトナを見て、オッサン呼ばわりしていたな、と思い出す。

俺がこうして遊んでいた頃は、まだ超大型巨人も表れていなかった。
俺が求めていた平和に近づいてきた壁内を実感して、無くしたはずの右足がジワリと痛んだ。

俺の腕が沢山汚れた分、こうして笑えるガキ共が増えたのだ。
そう思うと、何人も手に掛けていたあの地獄の記憶が優しく癒えて行く様だった。

まだ、巨人が絶滅したわけではないが。
それでも、この平和な壁内を見ると、俺はどうしても笑顔を浮かべてしまう。

ああ、俺の望んだ未来の一端がこうして根付いて居やがる。
なんだろう。とてもとても、暖かい。

夢なら醒めなきゃいいのにな。



>―――PM00:30
飯にする。
多少なりとも領土が広がったことで食糧事情も多少は良くなった。
昼下がりののんびりとした光を受けながら、俺も昼食を取る。
ああ、あの頃はこんな風に満たされた気持ちで飯を食うことなんて無かった。
なんだろう。何で俺は泣いてるんだろう。
無くした右足がひどく痛む。
痛い。クソが。



>―――PM3:20
店先にまた、見知った顔。
グンタが花を買いにきた。
どんな花がいいのか聞くと、いつもの真面目くさった表情で「明るい花束を」と注文される。
明るい。明るいか。
オレンジと黄色、優しいピンクと、挿し色に白を使った花束を作って奴に渡した。

何故かグンタは悲しそうに笑った。

誰にあげるのか。そう聞くと「秘密だ」という。
もしや彼女でも出来たのか。なにせ今の壁内は、以前よりも随分過ごしやすい状態になっている。
アイツは俺の頭をなでた。
でかい掌は兵士の感触だ。
まだ、やつは死線の中にいるのだ。そう思うと少しばかり切なくなった。ので、小さなカスミソウのブーケをオマケしてやった。
お前も、きちんと幸せになれ。
そんな変な顔で笑うなよ。俺だって幸せなんだぜ。
確かに足が無いのは不自由だが…何も殺さない日々はとても平穏なんだ。
去り行く大きな背を見送る。
嗚呼。なんだろう。胸がざわざわする。
夢から醒めそうだ。




>―――PM4:30
ピクシス指令が花屋に来た。
大きな花束が欲しい、そんな注文だった。
誰かにあげるのか。そう問いかけると、指令は静かに首を振った。
「ワシが今まで殺してしまった兵士に」
ああ。成程。
俺は小さく笑って、花束を纏める。
ありったけの花を包む。
両手で抱えて溢れるほどの綺麗な花束になったそれを指令に渡した。
指令は皺の深まった顔で笑う。

花が無くなった。

つまり、俺の店だって閉店だ。


仕入れをして、方々への連絡を付けて、扉を閉める。










―――――夢は醒めるから、夢なんだよ。

そして、この日の午前中は嘘をついて良いんだ。

なぁ。

妄想の中で位、幸せな未来を描いても許されるだろう?

今はもう、午後。

俺は花を手放し、―――握りなれたブレードを掴んだ。





[削除][編集]

|||1-|||

[戻る][設定][Admin]

WHOCARES.JP