飛びだせ、シーチキン！



今 日 も 庭 の ど こ か で
カ ラ カ ラ と 音 が す る


※主な登場人物。>>2
何でも許せる人向けなシーチキン観察日記。気侭に綴ろうか。

主な登場人物。


・シーチキン猫 : 愛称シーチキン。
…シーチキンの缶をカラカラと鳴らして庭に出入りする様になった野良猫。サイズがまずい。雄。模様の名称が分からない。


・赤司征十郎 : オレはオレだよ。
…庭でシーチキンと連呼して何秒何回目の呼名で来るか色々と試す。(京都の別邸住)


・静江さん : 別邸の家政婦。
…年齢不詳。恐らく70代。シーチキンをシー太郎、ブーちゃんプーちゃんと呼ぶ。
大体やらかすのはこの人だったりする。
例えば以前、ワインを作って父に渡していたが発酵してキッチンで大爆発した。

世界はキミの為にある！



いつからだろう。昨年度末あたりだったかな、部活もオフで久しぶりにゆったりと過ごした日。冬の京都の別邸の庭先でカラカラと物音がしたのは。何かを引きずっているような…カラカラと鳴る物音に少し広い庭に出たオレは音の正体が気になった。

小さな植込みの木の下がガサガサと揺れて更にカラカラと何かが鳴り響く。じっと腰を下ろして見ていれば隙間から猫界のKONISHIKIの様な猫が出て来た。なんて、ふてぶてしいんだ…人様の庭先でシーチキンの缶を舐め引きずっているその姿。
オレはその猫に
お前は何だ、と問うたが勿論答える訳もなく。その場にいたのはオレと猫、そしてシーチキンの缶だけだった。

故にシーチキン猫と名ずけた。
愛称はシーチキン。





オレが呼んだら、早くおいで。

世界がキミに恋をする！



今日も何ら変わりも無く、淡々と日常をこなして過ごして行く…訳がないだろう？
そんなつまらない日々なんか壊してしまえ。キミは良い意味の変化をくれたね。夜の帳が下りる頃、別邸に帰宅をするが中に入る前にシーチキンと呼んだ。…来ない。
またシーチキンと呼んだ。…来ないな。
少し考えてまたその名を呼べば、遠くで聞き慣れた鳴き声がする。
再びシーチキンと呼んでやれば少し離れた植え込みからガサガサとやって来た。
どう見ても肥満度指数が高いシーチキン。野良だからね、毛もごわついている。それでも撫でて欲しいのか喉をグルグル鳴らしてオレの足に体を擦り付けて撫でてと強請るお前は…可愛いね。
飼ってやりたいのは山々だが、キミは野良…外猫だから一度家猫になれば無駄にストレスを負わせてしまうのではないかと踏み込めない。
何よりシーチキンは他にも家を渡り歩いて餌を強請って食べているからその体型なのだろう。野良の人生を謳歌しているシーチキン猫。今日も呼べば甘えた声で鳴いて返事をしてくれる。今日も、お帰りをありがとう。ただいま、シーチキン。




いい子だから、次は三度呼ぶうちに来るんだよ。

世界がキミに牙をむく！



午前の授業も問題なく済ませて昼の休み時間になった。端末機の電源を入れれば手のひらの中で震えるそれ。…静江さんから動画が送られて来ていた。静江さんは動画の撮り方知っていたのか…。
動画を見れば、シーチキンが庭先のガーデンチェアの上で尻尾を垂らして寝ている姿だった。……可愛い。
けどそんなシーチキンの斜め下に黒くて黄色い眼の物体が。シーチキンとほぼ同じ同格同種のそれ。

え、何だこれは。何だお前は、と動画を見ていれば画面の中のシーチキンが起きて今まで聴いた事のないような威嚇の唸り声と尻尾を逆立ててその黒猫と対峙している。
動画がブレて何だか分からないが喧嘩が勃発したのは分かった。

まずい。シーチキンが怪我をしたらどうしようかと映像を続けて見ていたら静江さんの、ふく！！！と叫ぶ声が…え？、
確かシー太郎だかプーちゃんだかブーちゃんと呼んでなかったか？
とりあえずそこは置いておいて静江さんの叫んだ声に黒猫が固まっている。数秒してゆっくりとシーチキンの前から消えた…。

可哀想なシーチキン…。怪我とかしなかっただろうか。動画の中でか細く鳴くキミがオレの心を掻き乱す。





帰宅したら、また甘えにおいで。
今日は頑張ったね。