世界はキミに味方する！


人の世は世知辛いもので、けれど猫の世界もきっとオレが思う以上に無情で非常なものなんだろう。そんな事を考えていれば外からいつもの声が聴こえる。シーチキンが夜に来るとしたら、この時間帯が多いかもしれない。
硝子戸を開ければ見慣れた姿がそこにある。夜目だからかな、黒目が大きくてそこもまた可愛い。そっとキャットフードを差し出せば、辺りを見回しては少し食べを繰り返す。黒猫を警戒して鉢合わせしたくないんだろう。大丈夫、見守っているからゆっくりと食べて良い。そして満腹になったら今夜もたっぷりと眠るんだよ。お休み、良い夢を。明日またおいで。


オレがキミにしているの事はただの自己満足でしかないだろう。世間一般的に余計な手出し、無責任に中途半端な世話を焼いていると言うもの。餌をやるなら責任を取れと、オレ自身が感じている。猫の世界が無情で非常ならば、そんな世界の中でせめてオレの元では安心して空腹を満たせる、撫でて貰えると思って欲しい。明日の空腹さえ満たされるのか分からない、沢山の人に撫でて貰えない…キミの猫人生をオレの我儘で手助けさせてくれないか。キミが生きる手助けさせて欲しい。
人も猫も、いなくなったその席や場所には直ぐに座ろうとする者がいる。当たり前の様に。一期一会、オレとキミが会ったのも何かの縁が紡がれたものだ。

キミに癒される日々を失う事を考えて放棄した。

母の、夢をみた。

優しい手と優しい匂いを今も覚えている。
オレも誰かの、シーチキンのそんな存在になれたらなんて望むが、難しいだろうか。

世界はキミに溺れてる！


先日またシーチキンに引っ掻かれ、左下の口元にまた爪が刺さった。
原因は静江さんにあるとオレは思っている。少し肥満、訂正少しどころではないが肥満猫シーチキンが別邸の門前にいた。愛くるしいね、可愛くて困った。名前を呼んで笑って抱き上げれば、独特のあの鳴き声とグルグルと喉を鳴らす音。
その瞬間、別邸の方から物を落とした耳障りな音が響いた。シーチキンも酷く驚いたのかオレの口元をバシンっと叩きながら爪を食い込ませてきた。痛いね。シーチキンは満足したのか、地面に降りてオレの制服に体を擦り付けて来た。絆されると思ったのかい？お馬鹿さんと思いつつ絆されて終わった。
静江さんに後程、何をしたのかと聞いたら夕飯に鍋を落として硝子蓋を壊したと言われた。怪我がなくて良かったが心がざらついた。

オレに爪を立てるのはキミだけだよ。


21:56追記。
シーチキン夜の来訪。時計も無いのに体内時計は正常だな…今日も食べて満足したらゆっくりお休み。

世界はキミを困らせる！

今朝も5時40分頃に硝子戸の向こうで鳴くシーチキンに呼ばれた。朝が早いね。流石だ。カリカリと音を立てて食べるその毛を撫でれば少し湿っているのが凍っていた。…一体どこで寝て過ごしているのか、心配になった。最近のシーチキンは行動範囲が広いらしい。いいことだけれど、黒猫や他の猫と争えないのだから程々に。

世界がキミを走らせる！

春休みも部活だったが、部活動で部員が怪我や事故が無く良かったと思っている。
新年度も始まり、なかなか書きたくても書けなかったシーチキン観察日記。
シーチキンは相変わらずオレの別邸へ来ては窓硝子をバンッと叩いては来たアピールをする。鳴き方は変わらずに、まぁーんと可愛く鳴くんだ。春だからね、シーチキンもおませさんと言うべきか行動範囲が広がりガールフレンドキャット探しに忙しいんだろう。
そんな中で前にシーチキンを驚かせた黒猫までも餌を強請りに来る様になった。原因は静江さんだ。胡麻黒兵衛と名付けてしまった。
胡麻なのか黒兵衛なのかどっちかにしてやれば良いとオレは思う。