オレこんだけこの場で猫ちゃんの事可愛い可愛いっつってっけど、多分アイツはそう言われんのが嫌い。

照れ隠しだとか、男に可愛いっつー単語を充てられる違和感みてぇなモンから嫌がんのは分かる。かく言うオレは後者。例えば氷室サンみたいに顔立ちが中性的だったり桜井クンみたいに女子力高めな一面があんならそう言われんのも分からなくはない。でもオレは見た目も中身もそれこそファンシー・ビューティーとは無縁の健全な男子高校生なんでね。単純に意味が分からん。何お前、それ言わされてんの？罰ゲーム？って感じ。だから仮にそういう言葉を向けられたとて、怒るっつーよか頭ん中でハテナが飛び交うのがオレの反応。

ところがどっこい、猫ちゃんの場合は可愛いもん扱いされんのが心底嫌みてぇ。虫唾が走るだとか悪寒がするだとか、オレに対してもそういう事言う辺り最早生理的に無理っぽい。
そんで、だ。アイツ今でこそ巨神兵みてぇなナリしてっけど、確か中学ん時はもっとロリ顔だったはず。それこそ小学生、もっと昔の幼稚園児時代はそりゃもう犯罪急に可愛かったんじゃねぇかとオレは予想するワケでして。アイツの自我が目覚めたのがいくつの頃かは分かんねぇけど、欲しくもない褒め言葉投げられて嫌悪した事は一回二回じゃねぇんだろうな…なんて思うと、さ。ちょっと切なくなった。


可愛いは罪、ってこういう事なんだろうなぁ…

お帰り、お猫サマ。お前の口から"寂しかった"っつー極上のデレを賜り余は大変満足なのだよ。


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この前飛び掛かったオレの事犬みたいだっつったけど、今日のお前はオレよりよっぽど犬っぽかったよ。すげぇ愛しい。

調子がよろしくない。
身体がしんどいとか心が病んでるとかそういう事じゃなくて、なーんか全体的に上手くいかねぇ日ってない？それこそ人事を尽くせてないってだけの話なんだけどね。



誰にも何にも負けたくねぇオレが、今すべき事。
…腹拵えだ！

朝起きる度"今日こそ猫ちゃんに一日何回馬鹿呼ばわりされるか数えてやろう"って意気込むんだけど決まって途中でどうでもよくなる。

故に実行に移した事はねーけど、要は思わず数えたくなるほどの頻度で馬鹿の二文字を投げ付けられるっつー話だ。
一息吸って吐き出される言葉に何回もその言葉が乗ってたりする。「おい、馬鹿。」なんて呼ばれ方する事も珍しくはねぇから、もしかして自分の名前は『馬鹿』なんじゃねぇかって軽く錯覚起こしそうになってるオレの頭ん中で再生される音声がこちら。




「ふん、高尾和成というのか。贅沢な名だな。今からお前の名前は馬鹿だ。いいか、馬鹿なのだよ。分かったら返事をしろ、馬鹿。」














くっっそ怖ぇ…！

お猫サマの名誉の為に申し上げるけど、アイツの「馬鹿」は心底頭の悪い恋人に浴びせる罵倒じゃなくめいっぱいの愛情表現。だから時たま混乱すっけど、嫌だと思う事はまず無いかな。そう言うとまた"虐げられて喜ぶ性質"だとか検討外れな言葉吐き出されちまうんだけども。
オレはＳっ気こそあれどＭっ気なんざ一切ねぇって自負してる、見下されっと普通に腹立つじゃんね。見返してやりてぇ、認めさせてやりてぇって。そう思うワケ。



…中学時代、アイツとの始まりも確かこうだったな。なんて思い返してブレねぇ自分に拍手喝采。


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我ながら流石のホークアイ。
他所に吐かれた言葉も全部オレのモンだよ、猫ちゃん。…すげぇ嬉しかった。ありがと。