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┗2903.二人の「F」(142-146/155)

|||1-||||リロ
142 :シエン・グランツ(小説版オリジナル)
2013/01/14(月)22:49:52

その声の主は誰だったかな。いや、そもそも形なんて見えていないのでね。
はっきり認識出来たのは…『糸』だ。そう、糸。
細く頼りない、良く両の目を凝らさなければ見落として切り取ってしまいそうな、ね。
指の先で触れた時、声を出さずとも意志をそこに乗せて響かせられることに気付いた。
これは良い手段だ。

そして僕は迷うことなく『僕』の存在を知らしめたのだ。


>(僕は生きている!)

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143 :シエン・グランツ(小説版オリジナル)
2013/01/17(木)20:31:27

一体幾日ぶりだっただろうか。
ようやく退屈な暗闇の中から出て来れたと思ったら、そこも砂ばかりで面白味がないね。
まあ、僕が元々いた場所には変わりない。帰ってきた、わけだ。


久しぶりに踏んだ砂は相も変わらず味気ないただの砂だ。
見える景色はと云えば、あのある種の栄華の象徴のようだったこの宮殿は一体どんなザマだ?
ハッ、本当に面白い話だよ。

そして、それを見ているのが僕、だ。

どいつもこいつも塵だった、僕だけがこうやって生き残った。理論が証明されただけの事。

アァ…やはり僕こそが、



>(完璧な、生命だ)

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144 :シエン・グランツ(小説版オリジナル)
2013/01/22(火)20:20:55


(しかし、肝心の手が無い)


悪くはない、のだが少し面倒だ。
他者から、ましてや僕が作り出したものに頼らなければ動かない足ならさっさと取り戻してしまえばいい。
勿論在処は解っている、当然のことだろう、僕の身体なのだから。

今、迎えに行く。待っていろ、

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145 :シエン・グランツ(小説版オリジナル)
2013/01/22(火)20:42:02

久し振りと云っておこうか。
こんな所で液漬けになっているとは我ながら嘲笑を禁じ得ないな。


だがお前は相変わらずだな。自分の顔を鏡に映す以外に肉眼で観察する機会なんてまず無いのだからこれも滅多にない経験というものではあるのだが。
『ザエルアポロ・グランツ』は驕る故に敗北したのではない。
ただ準備が追いつかなかった。だがそれも見越してあらゆる可能性を想定し万全を期していたのだ。
この邂逅もお前達が用意したのではない。
僕の張り巡らせた策の上に乗っただけにすぎないのだ。
だがまあ、礼は一応述べておこうか。丁重に保管してくれて感謝するよ。


───お喋りはここまでだ。では、僕の身体は返してもらうよ。



(そしてガラスの中のお前は僕のものになる)

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146 :シエン・グランツ(小説版オリジナル)
2013/01/28(月)21:46:52


何故、お前は僕を拒絶する?


お前は、僕だろう?
何故僕を受け入れない?何故?何故だ?

>(聞こえない、そんな話は聞いていない)


お前は『お前』じゃないのか?そんな馬鹿な。僕の推測と計算が間違う筈がない。
ならお前が何かしたんだろう、!

>(云うな、云うな云うな)


云うな、それ以上云うな!喋るなっ!!




(───真実はある意味残酷だ。)
(僕は僕だが、お前は僕ではなかった。)
(いや、僕が 違った)
(なら、僕は一体何なのだ)


『ザエルアポロ・グランツではないと云うのなら、僕は一体【誰】なのだ』

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