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┗3223.徒然鋸草(4-8/17)
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4 :
藍染惣右介
2013/04/14(日)21:03:13
月みれば
ちぢにものこそ 悲しけれ
わが身一つの 秋にはあらねど
仲秋の名月。闇に明かにする其れを縁側にて閑かに眺める。
寝間着に羽織一枚着ただけのこの身は、少々肌寒く思える。
猪口に注いだ温めの燗を一口含みつつ、独りの侘しさを愉しむ。
周囲は微かに虫の音が鳴くばかり。他には何もない。
ーーー否、霊圧の近づく気配を察し、その方を見遣る。
「藍染隊長!」
草をかき分け赤い髪の死神が非常に慌てた素振りで現れた。
「どうしたんだい、そんな血相を変えて。」
虚でも現れたのか、それとも何か不測の事態でも起きたのだろうか。正直私にはどちらもどうでもいいことなのだが、隊長という立場を演じる限り、それらの問題の解決をせねばならない。面倒なことだ。
「何か問題でもあったのかい?落ち着いて話すといい。」
肩に片手を置き、促すように優しく声を掛け柔和な作り笑顔を浮かべる。
「いえ、藍染隊長が居られたのを見掛けたもので、つい来てしまって」
「?」
「あの、でも俺任務があってもう行かなきゃならなくて」
「???」
「済みません藍染隊長!では失礼しまス!」
深々と頭を下げ脱兎の如く去って行く後ろ姿を鳩が豆鉄砲を受けたような表情で見送る。
意味が判らない。彼は一体、何をしに来たんだ?
嵐のように過ぎた温帯低気圧は、其れまで此処にあった閑かさや侘しさ、ひやりと凛とした空気までをも根刮ぎ奪い取っていってしまった。
気を取り直すかのように口を付けた猪口の酒が何故か先程より温まっているかのような錯覚を感じ、忌忌しさに瞑目すると一つ小さく溜息を吐いた。
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5 :
阿近
2013/04/14(日)21:39:12
酒の席。気付けば俺と女と彼奴と三人。柄にもなく愉し過ぎて、席を立つ時間を見誤る。
二人を見遣ると、嗚呼、成程、随分とお似合いだと思えた。まだ時間はあるが、機会を与えてやろう。そう思い、席を立ち、軽くからかいの言葉と共に彼奴の肩を叩いた。
彼奴は戸惑いつつも照れ臭そうに頭を掻き、女はきょとんとした表情で首を傾げた。
遠くから紫煙を燻らせ乍、先程出た部屋の窓を見遣る。
彼奴と女が、口付けを交わしているのが見えた。
窓枠が額縁に見え、まるで何かの絵画作品のようだった。
嗚呼、思った通り。お似合いなこって。
胸の中に宿った苦い煙を吐き出しつつ、一人口角を上げて笑んだ。
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6 :
更木剣八
2013/04/14(日)22:13:29
肩に乗っていた桃色頭がまた拗ねていた。俺は表情を変えずに其奴の頬で遊ぶ。痛くねぇ程度に摘まむと肉が餅のように伸びる。
「もう!剣ちゃん!」怒ると膨らむので更に餅らしくなる。
「どないしたん?」ひょこりと狐が姿を現す。
「あ!ギンくん!」桃色頭はその姿を見るや否や一目散に俺の肩を飛び降り、狐の肩に飛び乗る。
「あのね、剣ちゃんが酷いの!」
「へー、そら酷いなぁ」
「まだ何も言ってねぇだろうが」
「剣ちゃんが意地悪するの!」
「意地悪なんてそないなこと許されへんわぁ」
「お前が其れ言えんのか?」
先程まで少女が乗っていた肩の温もりが消え、妙な寂しさを覚える。
狐と少女はクスクスけらけらと俺を見て笑う。
「剣やん顔怖いしなぁ?」
「剣ちゃんお顔怖ーい」
「顔関係無ぇだろうが!」
怒気を籠めて言ってみても狐は柳のようにゆらゆらと飄々としまるで堪えていないし、桃色頭はきゃっきゃと高く歓声を上げる。そのうちひそひそと内緒話をしては可笑しそうに喉を鳴らす。
ーーーなんだこりゃ?
今俺は此奴らに馬鹿にされて、怒るところだろ?なのに何でだ?
胸の中心が、よく判らん、何だ此りゃ?暖かい綿みたいなもんが詰まっている感じだ。
初めて知る感覚に違和感を覚える。内臓の代わりに胸や腹に全部その暖かい綿を詰め込まれているみてぇだ。よく判らねぇ。
「剣ちゃん?」
「ん?怒ったん?」
唐突に押し黙った俺を訝しげに見遣るその2匹が、どうやら俺の中に詰まった綿の正体だと気付いた直後、
(じゃあ今ぎゅうぎゅうに詰め込まれた此の綿が無くなっちまったら、俺は)
其処まで至って、続きを続きを考えるのを止めた。
(そうだ、無くならないようにすりゃ善い。)
ウダウダ考えんのは苦手だし、答えは単純明快だ。
「……別に怒っちゃいねぇよ」
2匹は顔を見合わせて変なの、と言って笑った。
要するに此奴らが笑ってたら善いんだろ。ーーーなんだ、其れだけだ。簡単なことじゃねえか。
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7 :
更木剣八
2013/04/14(日)22:14:22
煙管。
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8 :
更木剣八
2013/04/14(日)22:15:07
後程
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